いやあ、しみじみといい漫画だなあ。手塚治虫文化賞の短編賞を受賞した矢部太郎(お笑いコンビ・カラテカのボケ担当)の『大家さんと僕』(新潮社)である。90歳近い女性の大家さんと、その2階に間借りしている矢部太郎の交流。上品で、節度があって、お互いにさりげなく気を遣い合う他人行儀が、とてもいい。

■頑固者、女性の大家…命名の背景に何があったのか?

 じつは競馬には、これと正反対の関係が実在する。英国に1814年生まれのビゴットという種牡馬がいるのだが、そのビゴットの子として1821年に生まれた牝馬に、ランドレディという名が付いているのだ。ビゴット(BIGOT)は、頑固者、偏屈者という意味。一方、ランドレディ(LANDLADY)は、女性の大家という意味。一体、この一連の命名の背景には、何があったのだろうと、いぶかしい思いにとらわれる。

 今から30年以上も前、1985年の英国ダービーでのことだが、名騎手ピゴットが手綱を取った馬が、人気に反して着外に大敗したとき、その直後、エプサム競馬場のトイレの壁に、いたずら書きした新聞が貼られていた。PIGGOTT(ピゴット)の綴りに手が加えられて、BIGOT(=偏屈者)になっていたのだ。よっぽど大損したんだろうなあと、笑いが起きていたのを覚えている。

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