ディープインパクト産駒のワグネリアンが制した日本ダービーから6日……。同じディープの血を受け継いだサクソンウォリアーが、日本産馬としては初めてイギリスのダービーに出走しました。

――ん!? 日本産馬って? これは文字通り、日本で生まれたサラブレッドという意味です。

――ということは、日本の馬ということ? そう……だと、もっとよかったんですが、残念ながら違います。サクソンウォリアーはアイルランドに拠点を置く世界最大の生産者グループ・クールモアが、欧州2歳女王に輝いたメイビーをノーザンファームに預託。ディープと種つけをして誕生した男の子で、日本でも有名なオブライエン調教師の元で育てられたサラブレッドです。

 デビューから4連勝でイギリスのクラシック初戦、2000ギニーを勝ち、堂々の1番人気で臨んだダービーでしたが、最後の直線で伸び切れずに4着。インで脚を溜めたまま直線を向いたときは、一瞬、「おおーっ!」と声が出ましたが、日本産馬初となる英ダービー制覇は、次のチャレンジまでお預けになりました。

 凱旋門賞を見ていても思うことですが、あのレベルのレースになると出てくる馬も桁外れに強い馬ばかり。頭で考えているほど、楽にも、簡単にも勝たせてもらえません。優勝したマサーと、ロイヤルブルーの勝負服に敬意を表しつつ、――いつか、僕も! と、改めて意欲をかきたてられたレースでした。

 そして、その翌日です。シャンティイ競馬場で行われたフランス版のダービー、第178回ジョッケクルブ賞に、母セカンドハピネスとディープの間に生まれたスタディオブマンが出走。4頭の激しい叩き合いとなったレースを制し、見事、歴史的な1勝を挙げました。

――日本馬の勝利!? そこが競馬の微妙なところ。同じディープの血を受け継いだ2頭ですが、前述したサクソンウォリアーは日本で生まれたから日本馬。スタディオブマンは、受胎後、アイルランドで生まれているので、アイルランド馬となります。

 とはいえ、僕個人としては、そんなことはどっちでもよく、ディープの血を受け継いだ子が、世界を制したというその事実が、闘志に火をつけてくれました。僕もこうしちゃいられません。ひとつひとつ、目の前のレースに全力を尽くしたその先に世界がある。それを忘れずに、また今日からレースに集中します。

 今週、僕が騎乗するのは17日に行われるG3「函館スプリントS」(芝1200メートル)。パートナーは、ダイアナヘイローです。北九州記念、阪急杯と、すでに2つの勲章を手にしている相棒とのコンビで、武家のルーツがある函館に乗り込みます。北海道の競馬ファンの皆さん、今週末は、函館で会いましょう!

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