■非核化にかかるコストは!?

 では具体的に、巨額請求書の明細を見て行こう。まずは非核化にかかるコストだが、軍事評論家の古是三春氏はこう語る。「香港の軍事専門家に聞いたところ、5年から10年かけて核廃棄するには、20兆円の費用がかかるという話でした」

 米朝両首脳が署名した合意文書では、アメリカ側が主張した“完全で検証可能な非核化(CVID)”には言及せず。北が主張する“段階的非核化”にとどまった形となった。「トランプ大統領は、リビア方式に代わる新しい非核化プログラムを提案。それを金正恩委員長は大いに評価したそうです」と言うのは、外交評論家の井野誠一氏。

「“ナン・ルーガー方式”と呼ばれるもので、旧ソ連崩壊後に独立したウクライナ、カザフスタンなどに配備されていた核兵器を、ロシアに返すために採用された方式です。ウクライナやカザフスタンは、核兵器を国外撤去する見返りに、西欧から経済支援と体制保証を受けました。この際、アメリカは核兵器完全撤去前の管理や減縮、一部破壊などのコストと技術を支援。研究者らも、平和的研究の分野に転職させたりしました」(前同)

 また、南北統合にかかるコストについては、「韓国統一省は30年で統一が完成するという前提のもと、当初の10年間で、最大26兆6228億円かかると見込んでいます。世界銀行の試算ではそれより多く、最大で306兆円かかることになっています」(同)

 世界銀行の試算に20兆円の核廃棄コストをプラスすると、326兆円。イギリスのヘッジファンドの試算である216兆円を110兆円も上回る数字だ。それらのコストについて、専門家は異口同音に「非核化で恩恵をこうむる日韓両国が負担しなければならない費用。特に非核化に関係するコストは、日韓両国が負うしかない」という。だとすると、少なくとも、非核化にかかる20兆円の半分(10兆円)は覚悟しなければならないようだ。

「統一コストについては、韓国が基金の積み立てや目的税の新設、国債発行や公共機関の売却、さらには国防費の削減することで、ある程度賄うことになるでしょうが、とてもそれでは追いつきません。残りは国際機関や日本を含めた外国からの支援が要請されます」(前出の井野氏)

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