ニッポンの新幹線「3つの落とし穴」、東京五輪を控え安全神話に暗雲の画像
ニッポンの新幹線「3つの落とし穴」、東京五輪を控え安全神話に暗雲の画像

 6月9日、東海道新幹線の新横浜~小田原間で起きた凄惨な殺傷事件に、日本中が絶句した。「乗客の男が突然、リュックから刃物を取り出し、隣の女性客を襲撃。それを止めに入った男性がメッタ刺しにされて亡くなるという、衆人環視の中の凶行でした」(全国紙社会部記者)

 犯行動機や容疑者の家庭環境なども注目されたが、議論の的になったのは“新幹線の安全性”そのものだ。「“世界一安全な高速鉄道”といわれる新幹線は、車両の開発や整備技術に関しては確かに他の追随を許さない水準。分刻みで運行できる精密なダイヤ構築に関しても、安定感は“世界一”と言っていいでしょう。政府がアジア諸国に新幹線技術の“トップセールス”をかけてきた背景には、ハード面への絶対的な自信があるんです」(専門誌記者)

 ただ、手荷物検査など乗車時の安全対策は、これまでほぼ取られてこなかった。「新幹線では、これまで大事故こそ起きていないものの、1993年には男性が刺殺されたり、2015年に男が車内で焼身自殺を図り、女性が煙にまかれて死亡するなどの事件が。乗客を信頼するといえば聞こえはいいですが、もう、そういうご時勢ではないのかもしれません」(前同)

 今回の事件を受け、JR東海は“新たな安全対策”を発表。だが、「警備員の巡回を増やす」といった程度のもので、抜本的な対策とは言えない内容だった。「東京五輪を控え、国内外からさらなる乗客増が予想される中、改札での手荷物検査くらいはやらないと、再発は防げません」(前同)

 だが、JRがそれに着手する気配はない。そこには、3つの大きなハードルがあるのだという。「1つ目は、やはり利便性。いつでも飛び乗れるのが新幹線の利点ですから、乗車時の煩雑なチェックは利便性を損なうわけです。新幹線は極限まで効率を追求して精密ダイヤを組んでいますから、ひとつ手順を加えると、ダイヤも含めて根本的に見直さなければならないんです」(社会部記者)

 2つ目はコストの問題。「1日に45万人が利用する東京駅で仮に手荷物検査レーンを新設すると、ピーク時の混雑を緩和するには80本が必要という試算もあります。その設備投資や人件費を考えると、一人当たり500~1000円程度の値上げも検討しなければならない。格安航空会社も増えている今、競争力を下げたくないというのが本音でしょう」(専門誌記者)

 そして3つ目は、なんとも“日本的”な理由。「複雑に入り組んだ新幹線システムに手をつけるとなると、前の2つ以外にも、さまざまな不測の問題や、クレームも発生するでしょう。現在のJR上層部は、誰一人、そこに責任を持ちたくないんです。国交省からの厳しい指導でもない限り、変わらないのでは」(同)

 安全を取るか、利益を取るか、それとも“保身”を取るか――。日本の“分水嶺”となる五輪を前に、JRの姿勢が問われている。

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