■トランプ大統領が米朝首脳会談後に豹変

 確かに、会談の前後でトランプ大統領は豹変している。かつては、金正恩委員長を“チビのロケットマン”と罵倒していたが、会談後は“チェアマン・キム”へと格上げ“チェアマン”は組織のトップのことであり、相手に対する敬意が込められている。トランプ大統領がそこまで持ち上げたものだから、これまで北朝鮮に対して強硬姿勢一辺倒だった安倍首相も、「金正恩委員長には指導力がある」(18日の参議院決算委員会)と、同調せざるをえなかったという。

「実は、トランプ大統領側から日本政府に対し、“米朝会談で、こういう結果になる”という事前連絡は一切なかったようですね。そもそも、米朝首脳会談以降、安倍総理の笑顔を見たことがありますか? それが事の深刻さを象徴していますよ」(前出の小関氏)

 つまり、友好ムードこそ醸し出してはいるが、実際には米朝首脳会談における日本の“取れ高はゼロ”というわけだ。しかも、国際社会の目は、北朝鮮の非核化に向けた米朝間の具体的な交渉に向けられる。「米朝首脳会談以前なら、国際社会も拉致問題の解決を求める日本に理解を示してくれていましたが、米朝両国の友好ムードが広がったため、逆に国際社会が日本へ譲歩を求めるようになるのではないかと懸念しています」(外務省関係者)

 また、トランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題に触れ、「金委員長は従来のような“拉致問題は解決済み”という反応を示さなかった」ことが、事実として報じられているが、会談の3日後、北朝鮮の国営ラジオ『平壌放送』は密かに本音を覗かせている。同放送は、「(日本は)すでに解決された拉致問題を引き続き持ち出し、自分たちの利益を得ようと画策している」と論難し、さらには「朝鮮半島の平和の気流を、必死に阻もうとする稚拙かつ愚かな醜態だ」とまで酷評している。しかも、トランプ大統領の態度豹変によって、「拉致問題の解決が支援の前提」とする日本の外交方針にも暗雲が漂い出しているという。

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