■北朝鮮の非核化コストの問題、さらに自民党総裁選へ向けても

「トランプ大統領は、“米国はビタ一文出さない”と明言し、非核化の費用を日韓両国に押しつけています。そのため、安倍総理は北朝鮮の非核化を実現するため、IAEA(国際原子力機関)の査察費用を分担する方針を示しました。つまり、あくまでIAEAに金を出すということで、北朝鮮に直接渡すわけではないという姿勢です。このように、安倍総理は北朝鮮への経済援助と非核化費用を分けて考えているわけですが、金に色はありませんから、なし崩しになる可能性もあります」(前出の外交筋)

 非核化の費用は負担するとする安倍首相だが、『報道ステーション』(テレビ朝日系)の世論調査では、「北朝鮮が非核化を進める費用を日本が負担することについてよいと思わない」とする回答が、実に65%にも及んでいる。国民の多くの本音は、本当に朝鮮半島の非核化に繋がるかどうか分からない話に血税を投入してもらいたくないのだ。

 それだけではない。「かつて、日本が韓国と国交回復した際、将来、北朝鮮と統合することを前提に、北朝鮮への戦後賠償も含んだ金を韓国に払っている。だから、本来なら日本はビタ一文支払う必要はないはずだ。また、いくら国際機関に拠出するといっても、当事国である北朝鮮の強い意向があれば、いつの間にか非核化コストに賠償費用が上乗せられてしまう可能性もある」(前出の自民党中堅議員)

 やはり、日朝首脳の“タイマン対決”の序盤は、金正恩委員長の圧倒的優勢で展開しているようだ。しかも、劣勢に立たされる安倍首相“自身”が、新たな不安定要素として浮上しているという。「安倍総理は“セミの声が相当にぎやかになってきた頃”に、自民党総裁選への出馬表明を行うと述べていますが、9月の総裁選で3選を確実なものとするため、日朝交渉の成果を政局に絡めたいはず。支持率はやや持ち直したとはいえ、依然としてモリカケ問題がくすぶっており、総裁選の最大のライバルである石破茂元地方創生大臣は、党員票を集めるべく地方行脚に余念がない。総理としても、気が重いはずです」(全国紙自民党担当記者)

 おまけに、各社の「首相にしたい政治家」世論調査では、安倍首相の上に小泉進次郎・自民党筆頭副幹事長がランキングされることが目立ってきている。「その進次郎は、石破と連携する動きを見せ始めた」(永田町事情通)というから、安倍首相が警戒を厳にするのも当然だろう。政治評論家の角谷浩一氏が言う。「日朝交渉を総裁選3選に利用するというのは分かりますが、北朝鮮も安倍政権のそうした立場を利用しようとしているはずですから、安倍首相が得意としているはずの外交駆け引きで、困難な局面に追い込まれる可能性は否定できません」 相手は海千山千――北朝鮮が安倍首相の“足元”を見てくるというのだ。

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