■電撃訪朝するプランも
「焦る安倍総理は、右腕とでも言うべき側近に、日朝首脳会談のお膳立てを命じているようです。右腕とはもちろん、政権内で絶大な権力を握る秘書官の今井尚哉氏です。今井氏は、小泉内閣で“官邸のラスプーチン”と呼ばれた飯島勲内閣官房参与の北朝鮮人脈を引き継いだという話があります。飯島氏は朝鮮総連を通じて北朝鮮との人脈を築き、平壌で朝鮮労働党の要人とも会っている日朝のフィクサーですからね」(官邸筋)
一時、安倍首相が8月に平壌を電撃訪朝するというプランが、一部で報じられたことがあった。「首相の歓心を買いたい今井秘書官が、電撃訪朝を計画していたという噂でした。安倍首相が3選を盤石なものにするため、日朝交渉の成果を急いでいる証拠でしょう。今井秘書官は総理の信頼が厚く優秀な人物ですが、傲岸不遜でイケイケに過ぎるところもあります。拙速に事を進めてしまい、手痛いしっぺ返しを食らわなければよいですが……」(自民党関係者)
初動では、北朝鮮が優位に立っている日朝の水面下交渉。そんな中で総裁選の手土産に成果を焦る安倍首相と、首相の意を汲んで暴走しつつある腕利き秘書官――。これだけ眺めていると、日本の“獲得目標”はどんどん遠のいていくように思えてしまう。では、本来の日朝交渉は、どう進めていくべきなのか。拓殖大学主任研究員で元韓国国防省北朝鮮分析官の高永チョル氏は、その進展について、こう大胆提言する。
「まず日本は、北朝鮮に戦後賠償と経済支援を条件つきで約束すべきです。条件というのは、拉致被害者を先に返してもらうことです。北朝鮮が拉致という言葉を嫌うなら、“在北朝鮮特定日本人”などという名称に改めてもよいでしょう。まずは、拉致被害者の方々に一時帰国という形でもよいから日本の土を踏んでもらい、東京と平壌に連絡事務所を置く。そうして国交回復交渉を行い、実現したら、連絡事務所を大使館に格上げするというシナリオです」
日本にとっては北朝鮮に大幅に譲歩した格好に見えるが、これなら総裁選前に拉致問題解決のメドがつく期待ができるという。だが、西村康稔官房副長官は17日、『報道プライムサンデー』(フジテレビ系)に出演し、「(日朝会談を)8月や9月までにやるのは難しい」と漏らした。「これは、官邸サイドが路線変更したことを意味しています。全面解決が難しいことが見えてきたから、無理筋を突っ走って政権のイメージを落とすより、日朝交渉と首脳会談を総裁選の先に伸ばす作戦なんです」(前出の自民党担当記者)
ロシアのプーチン大統領は、9月にウラジオストクで開かれる東方経済フォーラムに金委員長を招待しているが、「このときに日朝首脳会談というのが、考えうる最速のシナリオ」(前出の外交筋)というのが実情だという。はたして、安倍首相は日本の国益を守り通せるのだろうか――。