昨年6月16日、東北楽天は2位の福岡ソフトバンクに0.5ゲーム差をつけ、首位に立っていた。強打のカルロス・ペゲーロを2番に据える超攻撃的な打線が牽引役となり、交流戦も10勝8敗と勝ち越した。まさか、そのちょうど1年後に辞任を発表することになるとは……。監督の仕事とは、まさに“明日は地獄”である。

 6月16日終了時点での楽天の戦績は21勝41敗1分け。首位を走る埼玉西武に16.5ゲーム差を付けられての最下位である。交流戦前、監督の梨田昌孝は、12あった借金を「ひとケタにする」と意気込んでいた。しかし悪い流れは変わらなかった。いや、交流戦に入り、チームの状態はさらに悪化した。16日、阪神に逆転負けを喫した時点で、借金は今季最多の20にまで膨らみ、指揮官は退路を断たれた。「6月にマイナス20はひどい数字」と率直に責任を認めた。

 今年1月に事実上のGMである星野仙一球団副会長が他界した。今季を“弔い合戦”と位置付けた梨田楽天だったが、「(選手には)逆にプレッシャーになった」と悔いた。

 梨田には野望があった。80年を超えるプロ野球の歴史の中で、3球団を優勝に導いた監督は三原脩(巨人、西鉄、大洋)、西本幸雄(大毎、阪急、近鉄)、星野仙一(中日、阪神、楽天)の3人しかいないのだ。3人とも梨田には縁のある名将だ。72年から88年にかけて三原門下の仰木彬がヘッドコーチと監督を務めた近鉄でプレーした。西本は言うまでもなく、近鉄時代の恩師だ。星野には「オマエしかおらん」との殺し文句で楽天に誘われた。

 2001年に大阪近鉄、2009年に北海道日本ハムで胴上げを経験した梨田が楽天で優勝を果たせば史上4人目の栄誉に浴するところだった。それだけにシーズン途中での辞任は無念の極みだろう。

 プロ野球の監督も若返りが進む。64歳の梨田は12球団最年長だった。リベンジのチャンスは訪れるのか……。

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