競馬はほんのささいなことで、結果が大きく変わってきます。枠順、展開、ペース、位置取り……馬場状態も、その一つです。この時期は、雨による馬場の悪化はある程度、織り込み済みですが、それでも良でできるのか、稍重なのか、重馬場や不良……短時間に激しく降る雨の影響で、コースがプールのようになってしまうのかによって、戦略も戦法もまるで変わってきますから、いつも以上に、天気予報とニラメッコする時間が増えます。

――でも、条件は全馬、一緒ですよね? それはそうなんですが、馬によって得手、不得手があるし、少しでもマイナスをカバーするためには、どう乗ったらいいのか。その馬によって、選択肢が広がるケースもあれば、逆に選べる戦法が限定される場合もあるので、できれば、良馬場でやりたいというのが騎手としての本音です。

 週末の日曜日から暦は7月。その梅雨の只中、中京競馬場で行われる後半戦最初の重賞競走はG3「CBC賞」(芝1200メートル)。サマースプリントシリーズの第2戦です。創設当時はダート1800メートルでスタート。そこから芝1400メートルになったり、芝1200メートルになったり。施行時期も夏と冬を行ったり来たりし、一度はG2に格上げにもなったこともあるこの重賞は、僕にとっても思い出深いレースの一つです。

 そう。あれは99年11月22日、小倉で行われたG2「第35回CBC賞」。このレースでコンビを組んだのは、フランスのG1「アベイユ・ド・ロンシャン賞」(直線芝1000メートル)を制したばかりのアグネスワールド。62キロの負担重量をものともせず、世界のホースマンをアッと言わせたスピード・スターの凱旋帰国第一戦でした。

――日本のファンにも、彼の強さを見せつけたい。5枠10番から飛び出した僕とアグネスワールドは、スピードの違いで先頭に立つと、終始、楽な手応えのまま逃げ切り勝ち。“うおぉぉぉぉーっ!”という、熱狂的な小倉のファンの熱い声に迎えられました。あれから19年。今年の僕のパートナーは、3歳牡馬のアサクサゲンキです。

 前走、5月26日に行われた新設重賞「葵ステークス」(芝1200メートル)は、出負けしたうえに、行きっぷりがいま一つで、乗っていて歯がゆい思いをしましたが、“今度こそ!”という強い気持ちで挑みたいと思っています。そこで気になるのは、やっぱり天気。これだけは神頼みするしかないので、皆さんも祈っていてください。

 そして、もう一つ。中京の開幕週では、2頭の新馬に騎乗する予定です。一頭はロードカナロア産駒のメテオウォーム。もう一頭は、ディープインパクト産駒のヤマニンマヒアです。まずは無事に帰ってくること。レースを怖いものだと思わせないこと。勝つ喜びを覚えてもらうこと……ここが、クラシックへの第一歩です。

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