■男性を破滅させる石「コイヌール・ダイヤモンド」

 5000年以上も前に発見された世界最古のダイヤモンド。コイヌール(光の山)と名前は優雅だが、このダイヤには男たちの欲望と怨念がしみ込んでいる。

 ペルシアのナディル王はコイヌールを奪うため、ムガール帝国に戦争を仕掛けた。残虐の限りを尽くしてダイヤを手に入れた王は、叛臣に暗殺された。王子は、ダイヤの隠し場所を白状させようとする部下に耳をそがれ、手を切り落とされ、両目を抉られた。

 その後、アブダビ王朝では王の弟が反乱を起こし、その弟は息子に裏切られ、追放されている。すべてコイヌールを巡る争いだった。

 血なまぐさい争いが収束するのは1849年、ダイヤがイギリスのビクトリア女王に献上されてからだ。コイヌールは男性を破滅させるが、女性には幸せをもたらすと語り伝えられている。英王室では代々、王妃だけがこのダイヤを身につけている。

■ゴミとして捨てられた奇跡の宝石「マクシミリアン・ダイヤモンド」

 1867年、メキシコ皇帝マクシミリアンは国民の反乱によって捕らえられ、銃殺された。彼がブラジルで購入し、妻に贈った33カラットのダイヤが「マクシミリアン」と呼ばれている。

 メキシコの反乱後、ダイヤは30年以上行方不明になっていたが、20世紀になってアメリカで発見。ニューヨークの宝石商の手に渡った。そして現在、再び行方が分からなくなっている。

 ダイヤが消えた原因は、宝石商の家に侵入した泥棒だったが、盗まれたわけではない。不審者に気づいた娘がとっさに、父の宝石箱を台所のゴミ箱に隠して警察に電話した。泥棒は逃げたが、動転していた娘は隠した宝石のことをすっかり忘れてしまった。思い出した時、ゴミ箱の中身は家族が捨てていたという。

 このダイヤは、人間に所有されることを拒んだのであろうか。

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