野村克也
野村克也

 なぜ今のプロ野球は面白くないのか? 球史に名を残す智将が、由伸巨人から侍ジャパンまでズバッと一刀両断!

 選手として監督として、輝かしい実績を残してきたノムさんこと野村克也氏。18歳でプロ野球界に飛び込んでから64年。現在の日本球界を、どう思っているのだろうか。

野村克也(以下、野村)「野球は“頭のスポーツ”である」というのが俺の持論。数あるスポーツの中で、野球ほど“間”が多い競技はないんだよ。ピッチャーが一球投げるごとに試合が途切れて“間”、つまり次のプレイまでの時間が生じる。そこで頭をフルに働かせ、行動に移すことができれば、たとえ弱者でも強者を倒せるかもしれない。その意外性こそが野球の醍醐味なんだけど、はたして今のプロ野球で「頭のスポーツ」が実践されているだろうか? 答えはノーだね。俺からすると、野球が「ただ投げて打って走るだけのスポーツ」になり下がっているように感じられるよ。「力と力の勝負」と言えば聞こえはいいけど、結局は投げ損じや打ち損じの積み重ね。戦力の優劣が、そのまま勝敗に直結しまうから、意外性や面白みなんてあるわけがないんだよ。今のプロ野球を見てみると、12球団中6球団、セ・リーグに至っては6球団中5球団の監督が外野手出身でしょ。このあたりも影響しているんじゃないかな。これも俺の持論なんだけど、「外野手に名将なし」。80年を超えるプロ野球の歴史で、外野手出身の名監督っていないんだよ。外野手は、他のポジションと違って緻密な連係やサインプレーが必要とされないし、外野の守備位置から野球を見ていても細かいことには気づかない。だから、外野手には野球を深く考える習慣が身につかないんだ。これじゃあ、「頭のスポーツ」は実践できないよね。手前味噌になるけど、その点、キャッチャーは違う(笑)。守備における監督の分身だから、グラウンド上で一球一球、試合の状況を判断し、他の選手たちに瞬時に指示を出さなければならない。この経験があれば、監督になってもスムーズに対応できるんだよ。

 実際、外野手出身で日本一となった監督は少ない。若松勉(ヤクルト)、西村徳文(千葉ロッテ)、秋山幸二(ソフトバンク)、栗山英樹(日本ハム)の4人だけだ。では、元外野手の高橋由伸監督が率いる今の巨人は、どうなのだろうか。

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