桑田真澄「甲子園のレジェンド」が見つめる高校野球の未来の画像
桑田真澄「甲子園のレジェンド」が見つめる高校野球の未来の画像

 野球少年たちが危ない――。甲子園を沸かせた大スターが、「日本球界」に警鐘を鳴らす!

 甲子園のレジェンド・桑田真澄氏。かつて日本中の野球少年たちが憧れた、まさに“高校球児の象徴”とも言える存在だ。しかし意外にも、桑田氏本人は当時から「高校野球の常識」には疑問を抱いてきたのだという。

「甲子園には、1年夏から全5大会に出場して、優勝2回、準優勝2回という結果を残すことができました。周囲からは“さぞ厳しい練習に耐えてきたことでしょう”と言われますが、実際は違います。確かに入部当初は、朝から晩まで練習漬けの毎日でした。でも、どう考えても非効率だと感じたので、1年夏に優勝した後、練習時間を3時間へ短縮することを監督に提案したんです。監督は驚いていましたが、“甲子園に出られなかったら元の練習に戻す”ことを条件に受け入れてもらいました。

 日本のアマチュア球界の問題点は、第一に旧態依然とした指導法が、いまだに続いていることです。現在、スポーツ医科学の分野では、さまざまな研究が進んでいます。それにもかかわらず、一部の指導者は若い選手の体力と集中力の限界を顧みることなく、連日、長時間の練習を課しています。さらには、ミスが悪であるという発想に立ち、失敗した選手にしごきや罰練習を課すことで、選手の自律を抑制してしまうケース、野球の教育的側面が強調されるあまり、指導者や先輩選手が体罰を与えるケースもあります。野球は本来、選手寿命の長いスポーツです。野球選手は20代半ばから後半にかけてピークを迎え、その後も適切なトレーニングを続ければ、40歳を超えてもプレーを続けることができます。ところが、日本の野球界を見ると、目先の勝利を優先するばかりに、10代のアマチュア選手の心身に、プロ選手でも困難な重い負荷を与えています」

 高校球児が汗と泥にまみれて猛練習する姿は、日本人にはおなじみの光景かもしれない。だが、それは成長過程の体に過大な負担を強いる側面があると桑田氏は語る。

「僕はアマチュア野球界に“人材育成主義”を持ち込まなければ、日本野球の未来はないと考えています。なぜなら、アマチュア野球こそ、日本野球のトップであるプロ野球に人材を輩出する供給源だからです。今、日本で人気があるスポーツは、代表チームやトップアスリートが世界で活躍している競技です。ところが、野球は代表チームが金メダルから遠ざかっているうえに、少子化の影響もあって競技人口の減少に直面しています。そんな状況で、代表チームの強化とトップアスリートの競技力向上を実現するには、故障や燃え尽き症候群が原因で、将来有望な金の卵たちが若くして選手生活を終えないようにする努力が必要です。甲子園や地方大会の熱戦が、多くの人たちの注目を集めるのは素晴らしいことです。しかし、高校野球で連投を強いて、肩や肘の故障を誘発させておきながら、代表チームの世界一を期待するのは矛盾した考え方なんです」

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