■東京オリンピックで除外される可能性も
こうガッツ氏が言うように、いまだにプロとアマでは別世界だという。「プロは、昔は6オンスの薄いグローブで、まともに食らうと、ジャブでも蝶々とパピヨンが天然色で目の周りを飛んで、“あんた、誰?”みたいな感じだった。一方、アマはヘッドギア着用で、グローブも10オンスと12オンス。ランニングを着ているだけでもプロからしたら、だいぶ違う。同じ競技に見えても、プロとアマじゃ大きな差があるのよ」
ガッツ氏は現役時代、アマ選手がプロ転向してきた際には、プロの厳しさを拳で教えてきたという。「昔、アマでトップだった選手がプロ転向で、うちのジム(ヨネクラジム)に入ってきたときは、まずリングに上げて鼻血が出るくらい、ぶっ飛ばしたもんだよ。米倉会長には“い、い、石松、やめろ~っ”って怒鳴られたけど、最初に体でプロとアマの違いを教えてやらないと、モノにならないから、それがオレたちから言わせると“阿吽の呼吸”というか、愛情なんだね」
そんなガッツ氏が、プロの厳しさを最も感じたのは、プエルトリコでの6度目の世界タイトルの防衛戦のときだったという。「プエルトリコの国民的英雄エステバン・デ・ヘススが相手でさ。向こうのホテルの部屋で契約書にサインするときに、テーブルの上に、それと分かるようにピストルが置かれていてね。“ああ、こりゃ勝ったら、無事じゃ帰れないかもな”って思ったよ」
ガッツ氏らが文字通り、命懸けでつないできた日本ボクシング界の歴史。現在、日本には6人の世界王者がいるが、残念ながら人気の低迷が深刻。また、20年の東京五輪ではボクシングが競技種目から除外される可能性がある。そんな中で、今回の騒動は起きたのだ。では今後、ボクシング界は、どうしていくべきか。「山根さんは潔く辞めたんだから、今後はクリーンな体制を作ることだね」
では、プロの世界は?「ファンも思っていると思うけど、今は団体が多すぎるよね。AKBだかTPPだか知らないけど(笑)、また増えるなんて話もあるみたいでさ。一番強いはずのチャンピオンが何人もいるのは本来、おかしいよね。それと、ボクシングはスポーツでもあり、格闘技でもあるから、万人に理解してもらうことは難しくて、それだけ改革が難しいという部分もあるよね」
ボクシングの人気復活は成るのか――!?
■ボクシング団体と現在の日本人世界王者
【WBA】1921年設立 井上尚弥、村田諒太
【WBC】1963年設立 拳四朗
【IBF】1983年設立 岩佐亮佑
【WBO】1988年設立 伊藤雅雪、木村翔