御嶽海
御嶽海

 長野県出身力士としては、208年ぶりの優勝! 今ノリにノッている若手エースが、意気込みを語った!(取材・文/武田葉月 ノンフィクションライター)

 3横綱が休場した名古屋場所を制した関脇・御嶽海。優勝インタビューでは男泣きしたが、感激に浸る間もなく、1か月にわたる夏巡業に参加。稽古に励む一方で、地元・長野の巡業では大歓迎を受けるなど、充実した夏を送った。初優勝で一気に「大関獲り」の場所となった秋場所。はたして、その夢は実現するのか? 悲願に燃える御嶽海を直撃した。

――初優勝直後の夏巡業は、いかがでしたか?

御嶽海(以下=御)(優勝したことで)僕のことを覚えてくれる人が多くなったことは、うれしかったですね! これまでは、「あのお相撲さん、御嶽海じゃない?(ヒソヒソ)」みたいな感じだったのが、「あ、御嶽海だ! また頑張ってね!」に変わった感じです(笑)。地元では、長野市と下諏訪町の2か所で巡業があって、合わせて1万人のお客様に来ていただきました。ありがたいことです!

――横綱、大関との稽古も充実していましたね。

御 ハイ! 稀勢の里関、豪栄道関、高安関から指名していただいて、稽古をつけてもらいました。僕はマイペースなほうなので、「稽古不足だ」と指摘されることも多いんですが、今回の夏巡業は、これまでのどの巡業より稽古が充実していたと思います。巡業の期間は長かったけれど、稽古していたから、逆に短かく感じたほどですよ。

――さて、先の名古屋場所では、初日から11連勝。12日目に、以前から「意識する存在」と話していた高安関との対戦で初黒星を喫しました。

御 高安関との相撲は、名古屋場所が一番印象深かったし、一番悔しかったです! 11連勝していて、この取組でストップさせられたからじゃないんですよ。(母親がフィリピン人同士の)高安関にはふだんからすごくかわいがってもらっていますが、このところ(本場所の対戦では)僕が6連敗していたんです(通算成績3勝9敗)。だから、ここで「負け」を切っておかないとと思っていたんですが、負けてしまった……。あまりにも悔しくて、支度部屋に引き揚げてきてからは、記者の人たちに背を向けて、一切話をしなかったくらい。ふだん、こんなことはないんですけどね。

――それほど悔しかった。

御 そうです。それで、13日目は3敗の豪栄道関に勝ったんですが、優勝争いに目を向けると、13日目を終えて、僕が1敗で、3敗に豊山、朝乃山の2人だけ。彼らは学生相撲をやっている頃からの後輩なんですよ。僕の中で、「(優勝は)豊山、朝乃山じゃないでしょ!」という気持ちがフツフツと湧いてきた。それで、「僕が優勝しなくちゃ!」と、初優勝を意識し始めました。確かに、3横綱に加えて、大関・栃ノ心関も途中休場しましたけど、それは意識の中になかったです。

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