夏の甲子園が終われば、U18アジア選手権(9月3日開幕・宮崎)である。話題の中心にいるのが金足農(秋田)を準優勝に導いたエース吉田輝星だ。果たしてアジア選手権でマウンドにたった吉田は“侍ポーズ”をするのか。侍ポーズとは彼の独自のルーティンだ。初回と6回、そして最終回の登板前にセンターを向き、右ヒザを突きながら刀を抜いたり収めたりするポーズを中堅手とタイミングを合わせて行うのだ。

 ところが準決勝前になって大会本部から自粛を要請された。自粛要請の理由について、高野連は「野球とは関係ないパフォーマンス」と説明している。これに噛みついたのが橋下徹元大阪市長だ。「AbemaTV」で、「命をかけてやってるんだから、選手は侍じゃないですか。侍が侍のポーズをしてはダメなんですか。高野連は侍のすることをさせているのにポーズはあかんって、ほんとよくわからん」と憤っていた。

 野球の世界には“アンリトゥン・ルール”がある。相手選手が不快に思うことはやるべきではない。過剰なガッツポーズなどは慎むべきだろう。しかし、吉田の“侍ポーズ”に関しては、それほど違和感を覚えなかった。重箱の隅をつつけば、「侍ジャパン」に選ばれるような選手に「侍ポーズ」を禁止するというのも妙な話だ。

 禁止といえば、かつてはこんなこともあった。春夏合わせて4度の全国優勝を誇る高松商(香川)には伝統校ならではの儀式がある。試合前、全選手が三塁ベースを囲んで円陣を組み、主将が口に含んだ水を吹きかけるのだ。「自分は死んでも魂は残って、三塁を守る」。これぞ侍だ。優勝した第1回センバツの三塁手で、在学中に病死した志摩定一を供養するための儀式だが、78年に遅延行為、宗教的行為を理由に高野連から禁止された。

 個人的には古き良き伝統は受け継ぐべきだと考える。吉田の件とは別に、高野連には再考を求めたい。

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