■本気の怪物・江川卓は打てない

 クレバーな大投手といえば、怪物・江川卓も忘れてはいけない。当時の巨人番記者は、こう語る。「江川は常々“理想は27球で試合を終えること”と公言していました。その根底にあるのは、エースとして先発完投するという意識。豪腕投手ですが、力をセーブしても抑えられる高い投球術も持っていたんです」

 江川は常に全力投球しているわけではない――これを目の当たりにしたのは、巨人の鹿取義隆GMだ。鹿取は大学時代、江川と対戦した試合で驚嘆させられた出来事があったという。「鹿取がランナーとして二塁に進んだとき、そこから江川の投球が一変。それまでとはまるで違う、すさまじいボールを投げ込んだといいます。それを見て鹿取は“本気の江川は打てない”と感じたそうです」(前同)

 江川が全力投球するのは、得点圏にランナーを背負ったとき。今風に言えば“ギアを上げる”投球だ。江川の現役当時、下位打線によく打たれて“手抜き”といわれた背景には、こんなエース哲学があったのだ。

 最後に紹介する「真のエース」は野茂英雄だ。トルネード投法から繰り出される剛速球と落差の激しいフォークボール。長嶋は野茂を社会人時代から大絶賛していたという。「“あのフォークは絶対に打てない。クローザーにすれば100%成功する”と断言していましたね」(同)

 野茂は8球団競合の末、1990年に近鉄入り。いきなり18勝で最多勝を獲得するなど、投手タイトル総なめの大活躍で、1年目からエースの座についた。当時は西武黄金時代の真っ只中。野茂の代名詞とも言えるフォークボールは、最強打線を苦しめた。「西武の主軸・秋山幸二に、“投げてくるのが分かっているのに打てない”と言わしめるほど、野茂のフォークはものすごい落差だった。もっとも、西武に限らず、当時のパ・リーグの主砲たちはみんな、お手上げだったようですけどね」(前出のスポーツ紙デスク)

 同じ投手の立場で、野茂を誰よりも高く評価していたのは、阪神の絶対的エースだった江夏豊氏だ。「豪快なピッチングに秘められた、客観的に自己分析できる知的な一面を称賛していました。プロ意識の高さこそ、往年の大投手も認めるエースの資質だったのかもしれません」(前同)

 今後、さらに伝説となる「最強4番」と「真のエース」の誕生に期待したい!

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