清原果耶
清原果耶

 9月14日に『透明なゆりかご』(NHK)の第9話が放送された。ドラマは、沖田×華の同タイトル漫画が原作。主人公の青田アオイ(清原果耶/16)が、高校の看護学科に通いながら看護助手として働く由比産婦人科には、さまざまな事情を抱えた女性たちが来院する。今回は性虐待という、原作漫画でも、重すぎる内容にショックを受けた読者が多かったエピソードだ。

 アオイが勤める由比産婦人科に一本の電話が入る。それは「小学生の娘が性被害にあったと訴えている」という、母親からの電話だった。院長の由比朋寛(瀬戸康史/30)は、男性である自分が対応しないほうがいいと判断し、旧知の女性婦人科医、長谷川侑子(原田夏希/34)に助けを求め、看護師らも万全の受け入れ体制を整えていた。今回はデリケートなケースなので、まだ知識と経験の浅いアオイは、当事者に声をかけないよう言い渡されていた。

 やがて母親と一緒にやってきた少女を遠くから見ていたアオイは、ショックを受ける。被害者は、以前からアオイが仲良くしていた平塚亜美(根本真陽/9)という10歳の少女だったのだ。図書館で会ったときの彼女は、元気でよくしゃべり、笑顔の絶えない少女で、自分の母が再婚したことを喜び、養父とも仲が良かった。しかし、病院で見かけた亜美の目には、光がなく、声も失っていた。

 長谷川医師の内診で、亜美は「日常的に性虐待を受けていた」という事実が判明する。アオイは、彼女が出していたかもしれないSOSに気づけなかった自分を責める。

 後日、病院の廊下で偶然亜美と会ったアオイは、意を決して声をかける。ふだんと変わらない態度で接するアオイに、亜美も少しずつ心を開き、2人きりになった屋上で、アオイに事実を打ち明ける。性虐待をしていたのは「今のお父さんなの」と……。

 今回は性虐待という、非常に重いテーマで、始まりから終わりまで、心臓が締めつけられるような苦しさを感じた。公式のツイッターでも「あらすじをご覧下さい。耐えられないとお感じであれば、視聴を回避して頂いても構いません」と告知をしていたほどだ。

 最初に、亜美が由比産婦人科に母親と来院したシーンで、私はすでに衝撃を受けた。亜美は感情を一切出さず、無の表情で、フードを被ったまま呆然と立ち尽くしている。母親も優しく声をかけてはいるが、娘の靴を脱がす手は震えていた。アオイの回想の中で笑う少女の表情と明るい声との対比で、悲しさはより増大される。

 被害者から虐待していた相手をどう聞き出すのか、非常に気になっていた。人の気持ちをうまく感じとることができないアオイは、亜美の変化に気づけなかったことに後悔していたが、そのことを亜美に伝え「今どう思っているのか、どう感じているのか教えて」と話しかける。相手が「誰なのか」と問いたださないという演出に、優しさを感じた。アオイの言葉に応え、亜美は養父にされていたことが「嫌だった」と語る。

 今回のテーマを映像化するにあたって、相当な苦労があったことは、ドラマのスタッフブログからも窺える。細やかな演出に、演者やスタッフたちの向き合い方も感じられ、心打たれる内容だった。次回はいよいよ最終回。すでに続編を望む声も聞かれる『透明なゆりかご』、どのような終わりを見せるのか、期待して注目したい。

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