生まれて一週間の命『透明なゆりかご』最後の悲しみと救いの画像
※画像はNHK『透明なゆりかご』番組公式サイトより

 9月21日に『透明なゆりかご』(NHK)の最終回が放送された。高校の看護学科に通いながら、由比産婦人科で看護助手として働く、主人公の青田アオイ(清原果耶/16)と、来院する妊婦たちとのさまざまな交流を描いたこのドラマは、ショッキングな回も多く、放送後、毎回大きな反響が起こっていた。産まれてくる命と、消えていく命。産婦人科で実際に起こりうるすべてを、包み隠さず見せるこのドラマの魅力は、主人公アオイ自身が感じ、口にする素直な言葉にもあった。

 ある夏の日、由比産婦人科で院長の由比朋寛(瀬戸康史/30)から、初産を迎えようとしていた妊婦、辻村灯里(鈴木杏/31)に、胎児が心臓に重い病気を抱えていると伝えられた。生まれても命は一週間と持たず、治療も難しい。灯里と夫の辻村拓郎(金井勇太/33)は、相談を重ね、彼女の体調を考慮して、中絶することも考えた。しかし、妊娠20週目を迎えた灯里は、胎動を感じ、子どもの存在をあらためて意識し、中絶を拒む。まだ父親としての実感が灯里のように感じられない拓郎は、妻の体を心配したが、結局は灯里の想いに寄り添い、夫婦は妊娠の継続を決めた。

 性別が男の子と判明し、2人は子どもに「トモヤ」と名前をつけた。そして大学病院に通い、懸命に診察を受けていた。由比はそんな2人に、生まれてくる子どもに延命治療を受けさせるか、自然に任せてみとるか、選ばざるをえないことを伝える。目の前に迫る厳しい決断に、迷い、苦しむ灯里と拓郎。

 そんなとき、灯里は亡くなった自分の母親のことを思い出していた。母親は重い病気で、灯里が幼い頃、ずっと集中治療室に入っていた。厚いビニールカーテン越しにしか会えず、母に触れることができなかった悲しさを思い出した灯里は、自分の子が生まれたとき、延命治療を選択すれば、おそらく同じ思いをするだろうと考えた。

 夫婦はトモヤの治療をせず、最期の一週間を由比産婦人科で、3人で過ごさせてほしいと由比に願い出る。2人の決断を受け、由比や看護師たちも準備を整え、全員でトモヤをみとる覚悟を決める……。

 産婦人科で起きる真実を描いたこのドラマは、毎回涙を流さずに見ることができない内容だった。しかし、これは現実に現場で起こっている出来事だ。今回は、生まれる前に子どもを諦めるか、生まれても一週間の命を延命治療するか、自然に任せるかという、過酷すぎる決断を突きつけられる夫婦が登場する。

 母親である灯里は、最初から最後まで悩み続けていた。その心情が伝わり、見ているこちらも胸が苦しかった。夫婦が「最期をみとる」という決断をしたとき、待ち受けるだろう苦しいラストに、気持ちが重くなった。自ら決断し、一週間、夫とともに子どもの短い命を見守った灯里だったが、トモヤが息を引き取ると、本当に自分の決断は正しかったのかと後悔を口にする。

 アオイは、そんな灯里に対し「私はうれしかったです。母にギュッてしてもらえたとき、すごく。子どもがお母さんにしてもらいたいことなんて、それくらいなんじゃないでしょうか」と、自分の考えを語る。抱きしめるという行為は「愛している」という言葉以上に相手に伝わるものだ。“注意欠陥多動性障害”という発達障害で「人の気持ちが分からない」ことに悩み続けてきたアオイだからこそ、出てきた言葉だったのかもしれない。しかし、その言葉に灯里は救われたはずだ。

 このドラマによって、出産はもちろん、女性たちが抱えるさまざまな事情にも気づかされた。そのことに目を向けさせてくれたという意味でも、本当にたくさんの人に見てもらいたいと思えるドラマだった。

※画像はNHK『透明なゆりかご』番組公式サイトより

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