※画像は連続テレビ小説『まんぷく』公式サイトから
※画像は連続テレビ小説『まんぷく』公式サイトから

 10月1日から放送が始まる安藤サクラ(32)主演のNHK連続テレビ小説まんぷく』。インスタントラーメンを生み出した夫婦の知られざる物語を描いた内容だが、そのモデルとなった人物が日清食品創業者の安藤百福(享年96歳)だ。

■「私には学問はない。あるのは実際の体験だけだ」

 安藤百福は 1910年3月5日、台湾の台南市東石郡朴子街という町に生まれた。幼い頃に両親を失くした百福は祖父母の元で育てられ、祖父の仕事であった呉服屋で厳しくしつけられた。掃除から炊事、洗濯など雑用を言いつけられ、幼い頃から、あいさつやマナーなど、商売の基本をたたきこまれたという。

 百福は高等小学校を卒業するとさっそく、祖父の仕事を手伝い、商売の機微を身につけていく。友人の紹介で図書館司書の仕事に就いたりもするが、商家育ちの血が騒ぎ「誰もやっていない新しい商売をしたい」と、メリヤス(ニット)販売を始め、大当たりする。

■「何か人の役に立つことはないか。そう思って周辺を見わたすと事業のヒントはいくらでも見つかった」

 順風満帆に見えた百福の人生は、戦争によって大きく傾いていく。1941年12月8日、宣戦の勅書が発布され、日本は太平洋戦争に突入。貿易の仕事ができなくなった百福は、幻灯機(スライド映写機の原型)の製造や炭焼きなど様々な事業を手がけ、兵庫県相生市では戦災で家を失った人のためにバラック住宅を製造する仕事もしていた。

■「私は一度豚になった。そこから這い上がってきたとき、食を掴んでいた」

 軍用機用エンジンの部品製造会社を知人と共同経営していたとき、資材が盗まれる被害に遭ってしまう。当時、資材は国から支給される官給品。軍の資材に手をつけたとなれば、最悪の場合、殺されてしまう。憲兵隊に正直に通報すると、「本当は貴様が横流ししたんだろ!」と逮捕。45日に及ぶ留置場生活で、百福は人生初の地獄を味わうことになる。

 留置場で出される食事は、麦飯と漬物、食器は汚れて悪臭を放ち、とても食える代物ではなかった。来る日も来る日も絶食を繰り返し、体が極限状態になるうちに、百福は「食」というものに突き当たる。

 人間にとって食べ物ほど崇高なものはないーー。

 何日も食べる気がしなかった食事が喉を通るようになった。汚れた皿も気にならなくなった。濁った水も飲めうようになった。

■「転んでもただでは起きるな。そこらへんの土でもつかんでこい」

 結局、知人の口添えもあって、留置場から救出されることになった百福だったが、地獄の留置場生活は「食」の偉大さに気づくきっかけとなったのであった。転んでもタダでは起きないのが安藤百福の流儀なのだ。

■「事業を始めるとき、金儲けをしようという気持ちはなかった。何か世の中を明るくする仕事はないかと、そればかり考えていた」

 出所後、長期療養を余儀なくされた百福は兵庫県上郡で終戦を迎える。

 1946年、大阪府和泉大津市に百福は移り住む。町には痩せ細った子供たちや亡くなった餓死者たちがあふれていた。

 ある寒い夜に百福は、阪急電鉄梅田駅裏手の闇市で、20~30人が並ぶ行列を見かける。行列の先は一軒のラーメン屋台だった。湯気の先では温かいラーメンをすすり幸せそうな笑顔が見える。

「衣食住というが、食がなければ衣も住もあったものではない」

 36歳になっていた百福は「食」を仕事にする決心を固めた。

■「失ったのは財産だけ。そのぶん、経験が血や肉となって身についた」

 1948年、製塩工場を営んでいた百福は脱税の疑いでGHQに拘束、巣鴨プリズンに収監されてしまう。おまけに安藤百福名義の不動産は没収、財産をすべて差し押さえられる憂き目に遭う。徴税を強化する当時の税務当局による“みせしめ”で、まったく身に覚えのない百福は裁判で2年間、闘うことになるが、訴えを取り下げ釈放される。

 事業家としては振り出しに戻った百福に、さらなる災難が振りかかる。請われて就任した信用組合が破綻。すべての財産を失い、再び無一文になってしまったのだ。

■「人生に遅すぎるということはない。50歳でも60歳からでも新しい出発はある」

 1957年、戦後間もない頃とは時代は変わり、食べ物は潤沢にあった。大阪府の借家に住んでいた百福はいよいよ「お湯があればすぐに食べられるラーメン」の開発に取りかかかる。

 自宅の庭に作った小屋に調味料や材料を運び込むと一人、即席ラーメン作りに励んだ。平均睡眠4時間、丸一年、1日の休みもなく孤独な開発を続けた。試行錯誤の末、1958年の春、後に『チキンラーメン』と呼ばれる即席ラーメンが完成する。百福は48歳になっていた。

『チキンラーメン』は全国で大ヒット。カップに入れた『カップヌードル』といった、後に世界的に展開する商品も開発し、量産されていく。

 不撓不屈の精神で戦中、戦後を生き抜いた安藤百福の言葉から勇気をもらう人は多いはずだ。NHK朝ドラ『まんぷく』のセリフにも注目したい。

※画像は連続テレビ小説『まんぷく』公式サイトから

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