月が変わり10月、いよいよ凱旋門賞です。今年の夏は、欧州と日本を行ったり来たりのスケジュールが続きましたが、すべてはこの日のためだったと言っても過言ではありません。毎年の目標であり、――勝ちたいレースを一つだけ挙げるとしたら? たくさんある中から、迷わずに選ぶだろうレースが、この凱旋門賞です。

 僕が初めて、この凱旋門賞に参戦できたのは、1994年のホワイトマズルで、結果は6着でした。子どもの頃から憧れていたレースに出られた喜びと、ジョッキーとして、もっとなんとかできなかったのかという結果に対する悔しさ。秤にかけると悔しさのほうがはるかに上回って、あの日からずっと、この凱旋門賞が、勝ちたいレースの最上位に位置しています。

 2度目は、7年後の01年。この年は、フランスに長期遠征をしていた年で、本番1週間前に、A・ファーブル調教師から急遽、依頼されての参戦でした。

――勝負は最後の直線! 迷わず騎乗した結果は、優勝したサキーから7馬身差の3着。上位人気馬がそろって入線した中で、唯一、善戦したサガシティの健闘は、フランスの新聞に、〈ほぼ人気通りの中、日本のジョッキー、ユタカが乗ったサガシティだけが番狂わせだった。もしも、ユタカじゃなかったら、サガシティが3着になることはなかったかもしれない〉と大絶賛していただき、これが大きな自信にもなりました。

 あれから17年……。この間、僕自身は、ディープインパクト、メイショウサムソン、ヴィクトワールピサ、キズナと4度、僕以外にも、日本の馬が毎年のように挑戦し続けてきましたが、結果は2着が最高で、いまだ、夢は夢のままです。

――次こそは! 負けても、負けても、それでも諦めずに挑戦し続けてきた凱旋門賞制覇の夢は、今では日本のホースマン、すべての悲願です。

■フランスG1凱旋門賞、クリンチャーで挑戦!

 今年、この凱旋門賞に挑戦する日本馬は、クリンチャー1頭だけ。でも、その後ろには、オーナー、厩舎関係者の皆さんはもちろん、日本の競馬に携わる人、すべての期待が詰まっていると思っています。前哨戦となったG2「フォア賞」ではシンガリ負けに終わりましたが、彼は叩かれてよくなるタイプの馬。ロンシャン競馬場の深い芝も問題なく走っていたし、本番では必ず巻き返してくれると信じています。

 発走は、日本時間10月7日の23時5分。この日は、フランスに遠征している2頭、ジェニアル、ラルクもそれぞれG1レースに参戦する予定になっていて、もしかすると、日本の競馬の歴史が変わる一日になるかも? そんな予感にワクワクしています。

 スタンドが金色になった新装ロンシャン競馬場で、勝った馬の関係者だけに許される、馬車でのパレード……日本の皆さんに喜んでもらえる最高の結果を目指して、僕にできるベストを尽くしますので、応援、よろしくお願いします。

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