■キックボクサー那須川天心とスパーリング!?

板垣 当時の写真を見ると風貌も違うんだよ。なんていうか……ただのアンちゃん。そこらを歩いているような、チンピラみたいなのよ。人前で光を浴びてきたオーラがまだない。やっぱり守るべきものができると強くなるんだ。俺は『バキ』の中で夜の営みを知ったほうが強くなれると描いたけど……あれはまあフィクションだからね(笑)。

山中 いやいや、あのシーンは最高でしたよ(笑)!

板垣 ボクシングと言えば、試合前にすると弱くなるって説と関係ないって説があるよね。ちなみに俺が史上最高のボクサーと思っているモハメド・アリは関係ないって言っているけど。

山中 史上最高のボクサーはアリですか。

板垣 最強と最高ってのは違うけど、やっぱり最高なのはアリだね。近代スポーツの最高峰だよ。スポーツマンとしてあれほどの存在はない。ボクシング界全体よりもアリのほうがデカいって言われたくらいだもの。

山中 僕の中で最高のボクサーは辰吉(丈一郎)さん。最強かどうかはともかく、彼の最高の試合を観て、ベルトが欲しくなりましたから。

板垣 ナコントンパークビュー戦(1997年11月22日辰吉の通算5度目の世界挑戦。WBC世界バンタム級王者のシリモンコン・ナコントンパークビュー戦ではKO負け寸前からの逆転劇を見せた)でしょ。ピンチになって、もうダメだって瞬間からの逆転。あれは確かに最高だった。

山中 そうです。僕はあれを見てWBCのベルトが欲しくなったんです。

板垣 山中選手は戦ってみたかった相手はいた?

山中 戦ってみたいとはちょっと違うんですけど、キックボクサーで那須川天心(20歳の若きキックボクサー。18歳でタイの現役王者に1ラウンドKO勝ち、19歳で2階級上のムエタイ王者に勝利。“神童”“キックボクシング史上最高の天才”と称される)っているじゃないですか。彼はボクサーとしても一流。元トップアマボクサーで格闘家の藤田(大和)と試合して、すごいカウンターでダウンを取ったんですよね。ボクシングの技術もあるから、現役中に一度、構え合いたかったなって思いますね。

板垣 俺、実は2度くらい山中選手と那須川がスパーリングをやり合ったって話を聞いたんだよね。でも、やってないんでしょ?

山中 完全に都市伝説ですよね(笑)。でも、あのキックでもボクシングでも一流で、独特の距離感を持った彼には興味がありましたね。

板垣 いやあ、それスパーリングでも金取れるよ。俺も観たい。

山中 でも、もう引退してしまいましたからね。もう戦う男じゃなくなりましたし。最近は表情が緩くなったと、よく言われるんですよ。それが嫌で、トレーニングを増やさなきゃと思いますけど。

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