■徳川家は読売巨人に似ている?

 2位に選ばれたのは『葵徳川三代』(2000年)。江戸幕府を樹立した徳川家康、秀忠、家光の三代を描いた作品である。「僕は阪神ファンなんで、大阪拠点の豊臣政権が好きなんですよ(笑)。だから徳川家康は嫌いだったんです。徳川家って、読売巨人に似ている気がしません?」

 松村氏から見たこの家康像とは、「盤石な体制を築くためなら、理不尽なこともやってのける人。その一方で、心の内では一刻も早く徳川家を安泰にしようと焦りに焦りまくっている」

 確かに『葵徳川三代』で描かれた家康は、決して“良い人”ではなかった。「“鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス”という言葉もあるように、家康は本当にジワジワと時間をかけて秀吉恩顧の大名たちを切り崩していくんですね。やり方が汚いと思われるかもしれないけど、政治とはそういうもの。僕は、どうしても家康が渡邉恒雄さんに思えて仕方ないんです。二代目の秀忠は長嶋茂雄さん。この2人の“親子愛”も見事なものでした」 阪神ファンの松村氏も、家康の策略には敵ながらアッパレと思ったそうだ。

 3位に選ばれたのは、NHK大河史上で最高の平均視聴率を記録した『独眼竜政宗』(87年)だ。「今でも覚えているのが、豊臣秀吉の小田原攻めのシーン。遅れてやって来た政宗は切腹覚悟で、白装束で秀吉の前に現れるんです」

 政宗役は渡辺謙、秀吉は勝新太郎が演じていた。「秀吉と政宗の初対面の緊張感を出すため、実際、勝さんも謙さんも、その日まで一度も顔を合わさなかったそうです」

 渡辺謙にすれば、勝新太郎は大先輩の俳優である。「謙さんの緊張が映像からもビシビシ伝わってくる」

 そんな中、勝演じる秀吉が政宗に近づいて、「あと少し来るのが遅かったら、この首はなかったぞ」と、ドスの利いた声で、謙さんの首に鞭を当てるシーンがあった。「その瞬間の、謙さんのギョッと息を飲むような表情……あれは演技ではない。本当に、そのときの政宗がそこにいると思えたほど」

 大物俳優が対峙した名シーンに胸は熱くなるばかり。その一方で、松村氏ならではの気になった点も。「秀吉と徳川家康、政宗の“年齢差”について大河の中で触れたことがあるんです。秀吉が長嶋茂雄さんとすれば、王貞治さんは家康で、政宗は清原和博。そう考えると、もう少し早く生まれていれば、政宗も天下を取れたかもしれません」 長嶋&王と同じ時代に清原がいたら……そんな想像を楽しむこともできるのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4