中日一筋23年。今シーズン限りで現役を引退し、与田剛新体制下、来シーズンからは2軍内野守備走塁コーチに就任することが決定した荒木雅博はいい指導者になるだろう。

 落合博満政権下、中日は4回のリーグ優勝と1回の日本一を達成しているが、攻守の要としてチームに貢献したのが“アライバ”の愛称で親しまれた荒木と井端弘和である。鉄壁の二遊間が投手陣を支えた。打っては通算2045安打。07年には盗塁王に輝いている。

 しかし、荒木の本当の「プロフェッション」は、プロ野球解説者がよく口にする、いわゆる「目に見えないプレー」の中にこそ確認することができる。一例を紹介しよう。日本シリーズ出場を決めた2011年のCSファイナル・ステージ第5戦でこんなシーンがあった。

 相手は東京ヤクルト。中日打線は先発・館山昌平の技巧に手を焼き、5回が終わった時点でヒットはわずかに2本。中日の先発・吉見一起も好投し、ゼロ行進が続いていた。突破口を開いたのが荒木である。6回裏1死から四球で出塁すると、いつもよりリードのスタンスを約半歩分、広くとった。走るため、ではない。牽制球をもらうため、である。

 なぜ、そんなことをしたのか。「僕が塁に出ると、彼の様子が変わった。執拗に指先を気にし始めたんです。“あれ、どうしたんだろう”と。館山に血行障害の持病があることは、もちろん知っていました」

 すなわち、普段より広めのリードは館山への“無言の圧力”だったのだ。牽制球に5球も費した館山は心なしかペースを乱し、次の井端に2ランホームランを浴びてしまう。「目に見えない」荒木のファインプレーが決勝2ランを呼び込んだのである。

■ドラフトで大阪桐蔭の“二刀流”の交渉権

 先に行なわれたドラフトで中日は4球団の競合の末、大阪桐蔭の“二刀流”根尾昂の交渉権を獲得した。プロでは内野手としてプレーする見通し。頭脳明晰にしてリーダーの資質十分。“荒木イズム”の後継者としての期待がかかる。

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