■世界の医学界は糖質制限による治療に否定的

 さて、この糖尿病を予防、改善する方法は一つしかない。健診で血糖値が高いと判断されたら、食事や運動不足に気をつけること。これに尽きる。

 血糖値を下げる方法として、炭水化物や糖質を極力とらないようにする糖質制限がもてはやされている。だが、『国民のための名医ランキング』(桜の花出版)の糖尿病治療で全国1位となり、糖尿病治療のオーソリティである『HDCアトラスクリニック』の鈴木吉彦院長は、「糖質制限が糖尿病改善に効果があるというのは、日本糖尿病学会や欧米の専門学会でもエビデンス(証拠)がないとされている」と批判的だ。

「2018年の米国糖尿病学会でも糖質制限による糖尿病治療法は否定されています。また、昨年の国際糖尿病学会では“糖質を食べる日本人こそ健康”だと評価されていたぐらいです。つまり、世界の医学界は、糖質制限による糖尿病治療に否定的なんです」(前同)

 鈴木院長は、最近の糖質制限ブームは「“糖質ゼロ”をうたい文句にしたい飲料水メーカーや食品メーカーが仕掛けた商法」と、バッサリ切り捨てる。「糖尿病の食事療法の基本はカロリーを抑え、栄養バランスに配慮した食事をするということに尽きると思います」(前同)

 だが、カロリーを計算しながら食事をするのは面倒くさいし、難しい。こんな人は、食べたものをスマホに入力するだけで簡単に摂取カロリーを計算をしてくれるアプリもあるので、利用してはいかがだろう。また、鈴木院長も独自に糖尿病用のアプリ(iryoo=App Storeで購入可)を開発していて、患者以外の一般人にも利用が広がっているという。「患者さんにはアプリで食事や運動を記録してもらい、これに沿って治療を進めています。これが最先端の糖尿病治療で、今後は、こうした治療が一般的になると思います」(同)

 食事は糖質制限でなく、カロリー制限をベースにする。栄養バランスを良くするには、和食や地中海料理(イタリア料理など)を基本にすればいいという。和食と地中海料理は新鮮な野菜をふんだんに使い、メインは肉より魚。脂質のバランスもいい。

 同じ分量、同じ食材でも、食べ方を工夫することで血糖値の改善に役立つ。寝る2時間前の食事や間食を控えることも、その一つだ。寝る前に食べると、より多くの糖が吸収されるからである。

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