5回東京1日目9R1000万下の南部特別は、レース前から異様な熱気に包まれていました。みんなが熱視線を注ぐのは、“障害の絶対王者”と呼ばれたオジュウチョウサン。今年も、障害のG1に出ていれば、まず間違いなく高い賞金を得られたはずなのに、それを捨ててまで、有馬記念に出したい! という夢を優先させた陣営の決断に、ファンが熱いものを感じている証です。

 最初に依頼を受けた際は、面白い挑戦やな。と思いながらも、ジョッキーとしては半信半疑。簡単にクリアしてもおかしくないし、そんなに甘くはないという気もするし……。レース当日が楽しみで仕方ありませんでした。結果は、圧勝! 今年、開設100周年を迎えた福島競馬場が沸きに沸き、表彰式はまるでG1レースで勝ったような、ものすごい歓声と拍手でした。

 あのとき、ふと思い出したのが……負けても、負けても懸命に走り続けた、高知競馬のハルウララです。

――面白そうやな。騎乗依頼をいただいたときの気持ちは同じ。でも、報道が過熱するにしたがって、嫌気が差していたことも事実です。競馬の醍醐味は、強い馬が強い勝ち方をすること――。そこから大きく外れるハルウララに注目が集まりすぎることに、ものすごい違和感を覚えるようになっていました。それが一変したのは、高知競馬場に集まったファンの声援です。レースには勝てませんでしたが、あのとき、あの瞬間、ハルウララは間違いなくスターホースでした。

――こういうスターもありなんだ。超満員のスタンドを見上げながら、ちょっとだけ競馬観が変わったことを思い出します。

 そのハルウララとオジュウチョウサンの違いは、戦う土俵は違うけれど、オジュウチョウサンは、勝ち続けることで注目を集めてきたということです。有馬記念参戦という夢が現実に見えてきた今、冷静に分析すると、タイムや勝ち方には、まだまだ不満が残ります。でも、しかし。彼はまだ平地に戻って2戦目。伸びしろは、これから戦わなければならない一線級の馬たちよりもあります。この先、どこまで勝ち進めるのか? 夢に手は届くのか? 僕自身も、楽しみになってきました。

 この日は、2歳牡馬のファンタジストで、G2京王杯2歳Sも制覇。年末、そして来春に向けて、楽しみが広がりました。この勢いに乗って、今週も、ファンの皆さんに喜んでいただけるような競馬をお見せしたいと思っています。

■今週はG1マイルチャンピオンシップ!

 17日土曜は、親友の木梨憲武さんが名付け親のゴータイミングで、G3東京スポーツ杯2歳S。翌日曜日は、ジャンダルムをパートナーに、G1マイルCSに挑みます。

――競馬は結果がすべて。この思いに揺るぎはありませんが、挑戦への過程、物語を楽しめるのもまた、競馬の魅力の一つです。

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