画像はミュージカル『刀剣乱舞』公式サイトより
画像はミュージカル『刀剣乱舞』公式サイトより

 11月14日、『NHK第69回紅白歌合戦』の出場歌手が発表され、ジャパンカルチャーを特集する企画コーナーにおいて、『刀剣男士』の出場が決まった。

 刀剣男士とは、登録者数450万人を誇る人気ブラウザ・スマホアプリゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』に登場する、新撰組・沖田総司の愛刀「加州清光」、伊達政宗の愛刀「燭台切光忠」、石切劔箭神社のご神刀の「石切丸」、天下五剣の一本で、最も美しいと言われる「三日月宗近」など、名だたる刀剣がこの世に顕現した際の姿の総称。これまで刀剣乱舞は、アニメに舞台、オーケストラ、そして2.5次元ミュージカルとさまざまなメディアミックスがなされてきた。

 今回めでたく紅白の舞台へと上がるのは、2015年から内容やキャラクターを入れ替え、現在まで続くミュージカル版に登場する刀剣男士たち。

 紅白出場会見には、加州清光(佐藤流司・23)、三日月宗近(黒羽麻璃央・25)、小狐丸(北園涼・26)、石切丸(崎山つばさ・29)、岩融(佐伯大地・28)、今剣(大平峻也・24)の“6振り”が出席。ちなみに、キャラクターは刀剣の数え方に準じて、振り、で数えるのがお約束だ。

 今や計20振りいる登場キャラの中でも、トライアル版の2015年、そして今年の夏に「阿津賀志山異聞2018 巴里」と銘打ってパリや東京で公演したこの6振りがミュージカル刀剣乱舞の礎を築いたと言っても過言ではない。

 これまでNHKで、何度か特集が組まれてきたミュージカル『刀剣乱舞』。今年10月28日に放送された『シブヤノオト』では、先のパリ公演に密着し、2.5次元を演じるという苦悩や舞台が出来上がるまでを追ったり、突然の網膜剥離というアクシデントで公演への出演が叶わなかった北園涼が熱い想いを語るという、濃密な内容となっていた。

 NHKとも密な関係にあるミュージカル『刀剣乱舞』。『紅白歌合戦』は満を持しての晴れ舞台のため、SNSでは「ついにここまで……! という感じ」「信じられない」「応援してきた長い月日を思うと感慨深い」「日本の誇るべき文化だと証明できた!」と、好意的な意見や感動の声であふれた。またその一方、「コスプレだと思われそう」「何も知らない人に否定的な意見を持たれそうで苦しい」「肩身が狭い」など、心配する声も少なくはない。

 刀剣男士たちはあくまで○○役の○○○○、ではなく「刀」として出演する。これはいわば、「宝塚歌劇団の女優が“オスカル”として登場する」のに似ている。こうした設定になじみのない視聴者にどこまで親しまれるかが課題だろう。

「物が語る故、物語」

 この言葉は作品中でも何度か出てくる言葉だが、筆者としては、数百年に渡る歴史の中で、時には美術品、時には武器として、常に人に愛され使われた日本刀たちが、今はこうして形を変え、また我々の側に寄り添ってくれているのでは、と考える。

『ジャパンカルチャーとして、もてはやされる文化』『職人の技が光る至極の一品と、それにまつわる所持者の生き様』、今と昔どちらのありようも、素晴らしい日本の文化だ。それを再認識し、その経済効果により「推し」の刀がこれからも丁重に保護されれば言うことはない。

 そしてなによりもこの歴史の目撃者となれたことを素直に喜びたいところである。

(オタク文化コラムニスト/椿みつこ)

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