セ・リーグ王者の広島を4勝1敗1分で撃破し、2年連続9度目(南海、ダイエー時代を含む)の日本一を達成した福岡ソフトバンクが今日本シリーズで「新記録」をつくった。シリーズ最多ホールド15。地味ながらスゴイ記録である。

 セ・パ別々の基準で算出されていたホールドが現行の基準に統一されたのは05年からである。〈中継ぎ投手がセーブの条件を満たしたときに登板し、一死以上のアウトを取りリードを保ったまま降板。もしくは同点時に登板し、一死以上のアウトを取り無失点に抑えて降板〉(NPB公式サイトより抜粋要約)

 昨季、NPB史上最多となる54セーブをマークし、レギュラーシーズン、日本シリーズともにMVPに輝いたデニス・サファテの穴をどう埋めるか。工藤公康監督が用いた策が攻撃的な継投だった。打たれてから代えるのではなく、打たれる前に代える。早め早めの継投が日本シリーズではズバリ的中した。

 勝てば王手のかかる本拠地での第5戦、工藤は4対4の8回表、2死無走者の場面でクローザー森唯斗を投入した。このゲーム、6回にソロホームランを放っている曾澤翼の一発を警戒してのものだが、工藤には「もう1点もやれない」との危機感があったのだろう。この危機感が柳田悠岐のサヨナラ弾を呼び込んだのである。

 仮にこのゲームを落とせば、2勝2敗1分で敵地に乗り込むことになる。星の上では五分だが、気分としては残りゲームを全て本拠地で戦うことのできる広島に分がある。シリーズ前、達川光男ヘッドコーチは「マツダではひとつ勝つのも難しい」と語っていた。裏を返せば、最初から本拠地のヤフオクドームで3つ勝つつもりだったのだろう。

「継投は夕立の傘と一緒。一手遅れたらずぶ濡れになる」 これは“継投の名人”権藤博の名言だが、代え時こそは監督の最大の腕の見せ所でもある。両監督の采配力の差が明暗を分けた平成最後の日本シリーズだった。

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