ビートたけし(北野武)
ビートたけし(北野武)

 縦横無尽のギャグと鋭い風刺で、テレビを席巻し続けるビートたけし。彼の最大の武器は、本質をズバリついたコトバだろう。これまで、たけしが世に放ってきた珠玉の金言をフラッシュバック!

お前の後頭部が俺を誘ってる。
(『我が愛と青春のたけし軍団』)

「ラッシャー、テメー!」

 ラッシャー板前がたけしのボーヤについていた頃(ラッシャーはたけしの最後のボーヤ)、ラッシャーはしょっちゅうたけしに怒られていた。

 仕事現場で自分の思うようにいかないときなど、行き場のない怒りをラッシャーにぶつけた。自分の一番身近にいるラッシャーに怒りをぶつけることで、たけしはどうしようもないイライラを全部吐き出していたのだ。そしてそれは弟子であり、ボーヤ(付け人)であるラッシャーの役回りだったのだ。

 車に乗っていると、助手席にいるラッシャーの頭に、後ろからバッチと蹴りが入る。

「お前の後頭部がオレを誘ってる」

 ラッシャーはたけしからよくそう言われた。
 “バチッ”と頭を蹴られて、

「誘うなよ、おーい」

 たけしがそういう軽口を叩くとき、ラッシャーは「師匠、今日はご機嫌だな」とわかる。たけしにとっては、それが弟子とのコミュニケーションの一つだったのだろう。

もちろん現場でうまくいかずに機嫌が悪いときは、後ろからガーンと蹴りが入って、

「ラッシャー、テメー!」

 ただ、どんなに怒られても、それは“ツッコミの殴り、蹴り”で、本気で殴られたり蹴られたことはなかったという。決してラッシャーが憎くて蹴っているわけではない。ラッシャー自身もそれをわかっていた。

 師匠と弟子だからこそ成立する“殴り殴られ”の関係。「こいつだから殴れる」という信頼関係。たけしと軍団の強い絆。弟子の頭にガツンと蹴りを入れるのも、たけし流の愛情表現なのだ。“パワハラクレーム大国”日本も、昔はこうだった――。

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