笑福亭鶴瓶
笑福亭鶴瓶

 残りの放送もわずかとなった大河ドラマ西郷どん』(NHK)。主人公の西郷隆盛を熱演する鈴木亮平(35)をはじめとして、実力派役者の芝居合戦が毎度、見ものだ。ここでは前回11月18日の放送を振り返り、あの役者に注目してみたい。

 富国強兵を訴える大久保利通(瑛太/35)に対して、西郷隆盛は朝鮮への使節派遣を目指す。岩倉具視(笑福亭鶴瓶/66)は西郷に朝鮮行きを命じるが、政府では太政大臣の三条実美(野村万蔵/52)が倒れてしまい、事態は急変。西郷の朝鮮行きに暗雲が立ち込めると岩倉が太政大臣代理となり、朝鮮国使節派遣を見送ることに。これを受け、西郷は政府を去ることを決め、薩摩へと戻る前に大久保の家を訪れて……という展開だった。

 西郷隆盛と大久保利通が会うシーンは、今回で最後とあって、なかなか感動的な回だった。とはいえここにきて、さらに存在感を増してきたように思うのが、笑福亭鶴瓶演が演じる岩倉具視だ。岩倉使節団の代表として海外を視察して帰国。その後、三条実美が病に倒れると太政大臣代理を名乗り、権力で西郷たちをねじ伏せる。岩倉具視のしたたかさと腹黒さを、鶴瓶が見事に体現していた。

 岩倉具視の初登場回は、8月12日の第30回「怪人 岩倉具視」だった。このときはコミカルなセリフが多かったこともあり、笑福亭鶴瓶の岩倉は話題を呼んでいたが、今もなお鶴瓶の存在はスパイスとして効いている印象がある。登場人物が目まぐるしく変わる大河において、3か月以上もメインキャストにあることだけでも、すごいことなのだ。

 笑福亭鶴瓶というと、『鶴瓶の家族に乾杯』(NHK)はじめバラエティのイメージが強い。『A-Studio』(TBS系)で見せる司会業もお見事で、本業の話芸で勝負し続けてきた唯一無二のコメディアンだ。とはいえ、鶴瓶は役者としても、とんでもない実力者なのだ。

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