このコラムをまとめた『名馬たちに教わったこと〜勝負師の極意3〜』を出させていただいてから1か月。競馬場で、移動の途中に、たくさんの方から、「読みました!」と声をかけていただきました。また先日は、仲人であり、敬愛する伊集院静先生から、本誌連載中の『作家の遊び方』の中で、過分なお言葉をいただきました。

〈――武豊という騎手は何なのか? その答えになることが、この著書には散りばめられている。競馬とは何か? を知る手がかりが一冊の本の中にあるのは珍しいことだ。ぜひ一読してもらいたい。〉

 言葉を紡ぐことを職業にされている先生から、こんなことを言っていただけるとは思ってもいませんでした。正直、うれしいような、くすぐったいような、変な気分です(苦笑)。

――ジョッキーは、競馬でそのすべてを語ればいい。それも一つの考え方ですが、ホームページも、このコラムも、より多くの方に競馬の面白さを、魅力を伝えたくて始めたものです。それが間違いではなかったことが、今は何よりもうれしいです。

 とはいえ、書籍の中で書き切れなかったこともたくさんあります。中でも、JRA通算4000勝記念と銘打ったために、地方競馬や海外については、まだまだ書きたいこと、伝えたい思い、感謝の気持ちがたくさんあります。その一つ一つを折に触れ、紹介していきたいと思っていますので、これからも愉しんでいただけたらうれしいです。

■吉田照哉の馬で海外G1凱旋門賞を

 ということで――今週は僕に海外への道を拓いてくれた恩人、社台ファームの吉田照哉さんについて書きたいと思います。

――今度、イギリスで乗ってみない? なんでもないことのようにサラッと騎乗依頼をいただいたのが、ホワイトマズルが挑戦するキングジョージ&QエリザベスSでした。レースはカラ馬に絡まれ、無念の2着。凱旋門賞の話をいただいたのは、その後に開かれたロンドンでの夕食会のときです。

――次はフランスで頼むよ! ポンと僕の肩を叩いて出て行った照哉さんの背中を、今でも覚えています。スキーパラダイスで勝った初めての海外G1「ムーラン・ド・ロンシャン賞」のときもそうでした。騎乗依頼をいただいたのはレースの4日前。

――凱旋門賞の下見をしてきてくれ。照哉さんのメッセージが書かれた社台ファームからのFAXでした。

 ジョッキーとオーナーブリーダー。立っている場所は違いましたが、同じホースマンとして一緒に夢を追いかけて来ました。話を伺うだけでも勉強になったし、本当に、たくさんのことを教えていただきました。あのときも今も変わらず、照哉さんには感謝の気持ちしかありません。

――いつかまた照哉さんの馬で海外のG1を勝ちたい。それが、凱旋門賞なら最高です。

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