■FA補強ゼロでも平均年俸が上昇

 ただし、ソフトバンクの平均年俸が球界一であることには、違った意味合いも含まれているのだという。「かつての巨人のように、毎年FAで高年俸の選手を獲っているわけではない。それでも平均年俸が年々上昇しているのは、選手が活躍して結果を残し、チームの成績に結びついているという証拠でもあるんです」(ベテラン記者)

 実際、工藤公康監督(55)就任後の4年間で、FA補強はゼロ。外国人を除けば、大金を使って獲得したのは、メジャー帰りの松坂大輔(38/現・中日)と和田毅(37)のみ。しかし、平均年俸は約2000万円も上がっている。「この数年、育成出身の若手がどんどん頭角を現してきています。ただ金にモノを言わせて補強するだけじゃなく、自前の選手もちゃんと育てている。そんな育成力も、ソフトバンクの強さの一因でしょうね」(鷹番記者)

 それを象徴する存在が、キャッチャーの甲斐拓也(26)だろう。今年の日本シリーズでは、“甲斐キャノン”と称される超強肩で、機動力を誇る広島の盗塁をことごとく阻止。シリーズのMVPにも輝いた。「甲斐は2011年、強肩という一芸を買われ、育成枠で入団。3軍でじっくり鍛えられた後、13年に支配下選手登録されると、17年から正捕手の座を勝ち取っています」(前同)

 育成枠の選手は年俸270万円程度。甲斐の今季年俸は推定4000万円だから、約15倍にアップしていることになる。

 ちなみに、甲斐が入団した同年、ソフトバンクは他球団に先駆けて3軍制を導入。育成選手にも、多く実戦経験を積ませようという狙いからだった。「16年には、2軍・3軍専用の『ベースボールパーク筑後』が設立されたんですが、これが本当にハンパない。球場2つに室内練習場、寮やクラブハウスもあり、最新鋭の練習機材までそろっている。とてもファームの施設とは思えません(笑)。これだけ金をかけるのは、育成を大事に考えている証でしょう」(同)

 現在、巨人も3軍制を敷いているが、まだ成果が出ているとは言えないようだ。「巨人で育成枠から1軍で活躍したのは、“育成の星”と呼ばれた山口(鉄也)と松本(哲也)くらい。一方、ソフトバンクは今年1軍で登板した投手だけでも、エースの千賀(滉大)を筆頭に、石川(柊太)、モイネロ、大竹(耕太郎)、二保(旭)と育成出身者が5人もいる。彼らだけで35勝していますから、スゴイですよ」(スポーツ紙デスク)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4