■スター性に嫉妬してライバル心むき出し

 リーグは違っても、“打倒長嶋”に燃えていた野村氏。南海時代のチームメイトだった野球解説者の江本孟紀氏は、その理由をこう分析する。

「ノムさんが長嶋さんを目のカタキにしていたのは、“羨ましさ”からでしょう。もともとノムさんは巨人ファンだし、長嶋さんは自分にない天性の“スター性”を持っている。そんな憧れや羨ましさが裏返しになり、むき出しのライバル心に変わったんだと思いますよ」

〈長嶋が太陽の下で咲くひまわりなら、どうせオレは日本海で夜に咲く月見草〉 野村氏が残したこの名言も、「ねたみ・ひがみ・うらみを込めて1か月考えた」と後年、自ら明かしている。

 そんな野村氏に対し、長嶋氏のほうはどうだったのか。前出の元記者は、こう証言する。

「当時のミスターにとって、ノムさんは単純にパ・リーグの有力選手の一人。それほど特別な意識はしていなかったようです。ただ、ミスターが第二次政権で巨人の監督になり、野村ヤクルトと戦うようになってからは、ちょっと変わりましたけどね……」

 そう、2人は現役引退後、今度は同じリーグで戦う監督として、再び敵対関係となっているのだ。

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