リーグ3連覇を達成した広島だが、1992年から2015年までは暗黒の時代だった。24シーズンも優勝から見離されたのだ。

 長期低迷の理由のひとつにあげられるのが93年オフに導入されたFA制度である。大物野手だけでも、これにより江藤智(99年巨人)、金本知憲(02年阪神)、新井貴浩(07年阪神)、そして今オフ、丸佳浩(巨人)がチームを去った。丸に対し、広島は「4年総額17億円」を提示したが、巨人の「5年総額35億円」の前にはひとたまりもなかった。

 大物FA選手の移籍は世代交代を促すという意味でプラスの面もある。しかし次の選手が育ってくるまでには時間がかかる。ダメージは深刻である。

 広島のリーグ3連覇の原動力は1番・田中広輔、2番・菊池涼介、3番・丸の“タナキクマル”だった。彼らは打撃ばかりでなく守備でもチームに貢献した。今季は3人揃ってゴールデングラブ賞に選出された。この3人には共通点がある。丸は千葉県、田中は神奈川県、菊池は東京都と揃って関東の出身者なのだ。

 早ければ菊池は来年、田中は再来年にもFA権を取得する。「菊池と田中もFA権で関東のあのチームに行くのでは……」 ファンがそう気をもむのも無理からぬ話である。

 たとえば菊池。以前、本人から、こんな話を聞いた。「江藤さんが広島からFAで巨人への移籍が決まった時に、江藤さんの実家にまで行ってボールにサインをしてもらった。するとボールに“ジャイアンツ”と書いてあって。“あぁ、本当に巨人に来るんだなァ”と実感しました。子供の頃は巨人ファンだったのでうれしかったですね」

 一方、田中の出身校は東海大相模と東海大。巨人・原辰徳監督と同じコースだ。巨人には弟の俊太もいる。

 さらに悩ましいことに、今では“不動の4番”にまで成長した鈴木誠也も東京都の出身なのだ。広島にとって今なおFAは鬼門である。

あわせて読む:
・ソフトバンク王貞治「V9の巨人を超えた!」長嶋茂雄も脱帽