■大阪芸者が寅さんの膝で泣き崩れて

 ちなみに、歴代マドンナの中でも、リリーのような、いわば“カタギ”ではないクロウト女性は、いずれも寅さんとの相性がいい。そのタイプには他に、芸者(太地喜和子)、ショーガール(木の実ナナ)、テキヤの未亡人(音無美紀子)などがいる。

 第27作『〜浪花の恋の寅次郎』(81年)で松坂慶子(66)が演じた大阪芸者・浜田ふみも、その典型だ。彼女は寅さんの膝で泣き崩れ、そのまま眠ってしまうほど心を許していた。「色っぽく、“触れなば落ちん”の風情があり、それがよかった。妄想を抱かせるマドンナでした」(前出の秋本氏)

 松坂は、それ以前に『配達されない三通の手紙』(79年)でセクシーなバックショットを披露。遊女を演じた次の『五番町夕霧楼』(80年)ではバスト公開が期待されたが、またも残念ながらヒップどまり。『青春の門』(81年)での故・菅原文太とのセクシーシーンで全身一糸まとわぬ姿を初めて見せた。マドンナを演じたのは、その直後のことだ。「寅さんとのカラミで、そうしたシーンがあるのではないかと、淡い期待をしたんですが……(笑)」(前同)

 もちろん、我らが寅さんは、そんな展開には持ち込めないのだった。だが、彼女はその後、『道頓堀川』(82年)、『蒲田行進曲』(82年)、『人生劇場』(83年)、『火宅の人』(86年)など、不倫関係が噂された深作欣二監督作品を中心に次々とセクシーシーンを演じていき、劇場の観客動員に貢献。80年代の松坂は、寅さんとともに、斜陽の日本映画界を支えていたのだ。そんな彼女だが、90年にミュージシャンの妻に。そして、41歳のときに第46作『〜寅次郎の縁談』(93年)で、料理店経営者の坂出葉子役で再登場している。

 他に、カタギではあるが、寅さんが同志的親近感を覚えたマドンナもいた。秋吉久美子(64)が第39作『〜寅次郎物語』(87年)で演じた高井隆子だ。なぜなら、彼女は化粧品のセールスで全国の販売店を回る仕事をしているからだ。旅を住処とする寅さんとの共通点があったのだ。

「しらけ女優」と呼ばれた秋吉も、この作品に出演したときは女盛りの33歳。少女っぽさを残しつつも、ほどよい熟れ方をしていた。「それから30年以上たった今でも、印象が変わっていないのがすごい。2000年代になって26歳年下の日系アメリカ人男性と結婚、離婚を繰り返すなど、オンナとして現役だからでしょう」(テレビ関係者)

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