■恋愛には暗黙のルールが

 寅さんの恋には、暗黙のルールがいくつかある。「マドンナ以外の美女と遭遇しても、好きにならないというのがその一つです」(映画館館主)

 さすがの寅さんも、二股はかけないのだ。「それから、マドンナに他の誰かも惚れているのが分かると身を引き、それを援護射撃する立場に回るというのが二つ目です」(前同)

 第14作『〜寅次郎子守唄』(74年)で十朱幸代(76)演じる木谷京子は、柴又の病院に勤める看護師だ。「明るく朗らか。誰にでも優しく、性格にクセもない。そして庶民的な美人。魅惑的なマドンナでした」(同)

 とてもモテそうにない合唱団のリーダー(上條恒彦)が彼女にゾッコンなのが分かると、冷やかしつつも応援に回る寅さんだった。ちなみに、演じた十朱は最近、『愛し続ける私』(集英社)という自叙伝をリリースし、その関連でテレビで過去の恋愛について、たびたび語っている。「プレイボーイとして知られた歌手の故・小坂一也と事実婚関係を解消したあと、12歳年下の故・西城秀樹と熱愛。結婚発表寸前、周囲の反対により秀樹が心変わりし、破局を迎えたとか」(前出のスポーツ紙記者)

 樋口可南子(59)は第35作『〜寅次郎恋愛塾』(85年)で、暗い過去がある写植オペレーター・江上若菜を演じている。ここでも寅さんは作品名通り、彼女に惚れた男(平田満)に恋の指南をしている。樋口可南子といえば、91年の写真集『Water Fruit 不測の事態』(朝日出版社)の刊行により、ヘア解禁のきっかけを作った人物。「日本の文化史に名を残す存在ながら、マドンナを演じた頃から今まで清楚なイメージのまま。だから、CMに長く出続けられるんでしょう」(広告関係者)

 田中裕子(63)がデパート店員・小川螢子を演じた第30作『〜花も嵐も寅次郎』(83年)も、恋愛指南編だ。この作品で、彼女と結婚することになる男を沢田研二(70)が演じた。「共演により知り合った2人は実生活でも結婚します。ただし、そのためにジュリーは、妻だった元ザ・ピーナッツの伊藤エミ(故人)に、18億円という多額の慰謝料を支払ったんです」(前出のスポーツ紙記者)

 なお、田中は渥美清の他界で幻に終わった第49作『〜寅次郎花へんろ』でも、マドンナとして出演することが予定されていた。

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