■映画やドラマでも活躍する芸達者ぶり
歌だけではなく、芝居も得意とする芸達者ぶりも両者に共通している。サブちゃんは、『兄弟仁義』シリーズほか、東映の任侠映画に多数出演。テレビドラマ『暴れん坊将軍』(テレビ朝日系)での、め組の頭役でもおなじみだ。さらに、4578回続けた座長公演では、数々の演目に挑んでいる。
一方、実は、さゆりの芸能界デビューは女優業だ。「レコードを出す前にも、『光る海』(フジテレビ系)というテレビドラマに出演していました」(同)『津軽海峡〜』のヒット後も、空港が舞台の刑事ドラマ『大空港』(フジテレビ系)に刑事役で出演。映画『トラック野郎・故郷特急便』(79年)にはマドンナ役で登場。NHK大河ドラマ『功名が辻』にも顔を出した。
また、2人は16年に、そろって缶コーヒー『BOSS』のCMに出演している。「北海道新幹線開通をモチーフとし、青森側で石川さんが『津軽海峡〜』を、函館側で北島さんが『函館の女』を口ずさむという内容でした。2人が国民的歌手であることを証明する起用だと言えます」(広告代理店スタッフ)
そして、何よりの共通点は、大晦日の名物番組に長く出続けたことだ。歌手・音楽プロデューサーなどマルチに活躍し、『紅白歌合戦の舞台裏』(全音楽譜出版社)、『昭和歌謡の謎』(祥伝社)ほか、多くの著書のある合田道人氏は、『紅白』における2人を、こう語る。「石川さんは毎年、新曲を出しているのに、この10年ほどは、『津軽海峡〜』と『天城越え』を交互に歌い続けています。そうすることで、この2曲は“大晦日にはあの曲を聴きたい”と思わせる、一種の風物詩になったんです」
ただし、両曲には大きな違いがある。「100万枚ヒットの『津軽海峡〜』と違い、『天城越え』は発売年に4万枚しか売れなかった。それを、『紅白』の舞台で歌い続け、誰もが知る代表曲にした。これは、北島さんの『まつり』にも言えることです」(前同)
サブちゃんも、当初は突出したヒット曲というわけでもなかった『まつり』を、平成に入ってから6回も歌い、年末の定番曲に押し上げていったのだ。そしてまた今年、『まつり』を5年ぶりの『紅白』で披露することになった。
こうした2人の代表曲は、演歌の“神曲”として、若者にも認知されている。 「お二人は、『紅白』を通じて、日本の宝である演歌というタスキを若い世代につないだ。すごいことをやってのけたんです」(同)
平成最後の大晦日が待ち遠しい!(文中一部敬称略)