■スリップが一番の注意点

 JAF広報課の秋本安香氏は、「一番の注意点はスリップ」と話し、その危険性を解説する。「車線変更であっても、乾燥した路面の感覚で行うと、スリップにつながって危険です。タイヤが一度スリップを始めると、ハンドルでは車を操作できなくなってしまいますから」(前同)

 一度スリップすると、もはや制御不能に近く、仮に、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)がついていると、ブレーキを踏み込んでもタイヤはロックするだけで、ただスリップするしかなくなるのだ。この場合、何かにぶつかって停止するしか方法はないため、自然走行(スリップ)に任せてスピードダウンを待ち、自然にタイヤが路面に食いつくのを待つしかない。また、雪道や凍結路を走る場合は、安全な場所でブレーキをあえて強めに踏んでみて、ABSの作動状況やスリップ具合を確認しておくことも重要だ。

「また、前方車両との車間距離は通常よりも多めにとってください。また、下り坂などでは、あらかじめ減速することが重要です。発進時にしても、通常のようにアクセルを踏み込むと、空回りするだけ。じんわり、ゆっくり発進することが大事です」(同)

 では、降雪地帯を走行する際、特に注意するべき場所はどこか――秋本氏によると、「橋とトンネルの出口」が、警戒すべきポイントだという。一般に、路面温度は0度を下回ることはない。しかし、橋は、橋そのものが氷点下の外気にさらされ、路面が凍結してしまう可能性があるのだ。また、トンネルの中と外では当然、気温差がある。そのため、トンネル内部の路面に問題はなくても、出口近辺は凍結している可能性があるのだ。しかも、トンネル内部を走る速度で凍結路面に進入すると、スリップする可能性が高いのは説明するまでもない。冬季にトンネルを走行する際は、出口が見えたら減速するのが肝要だ。

 また、「雪国で通行量の多い道や交差点などは、降ったままの雪が固められることで圧雪路面となります。圧雪路面とは路面がツルツルの状態で、まさにアイスバーンの状態。これは雪道以上に滑りやすいので、早い段階での減速が必要です」(同)

 凍結した路面の場合、スタッドレスタイヤを装着していても、制動距離は、時速40キロで最長78メートルに及ぶという調査結果もある。これは、乾燥路面(8メートル)の10倍となるため、警戒地点に差し掛かる際は、早い段階でのブレーキの踏み込みが重要だ。

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