■“皇室の慣例”をいくつも覆して

 在位中、被災地では床に膝をつき、目線の高さを被災者に合わせ、常に国民に寄り添う姿勢を見せてきた陛下。そのお気持ちをよく表しているのが、1989年の即位後に臨んだ朝見の儀での次のお言葉だ。「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません」

 このお言葉を聞いた久能氏は、まず「時代が変わった」と感じたという。それを如実に表すのが、「皆さんとともに……」というくだりである。「儀式の席で、皆さんという言葉を使われたことに、これから、より国民に近い皇室になるという変化を感じました」(久能氏)

 それから平成31年の今年まで、国民を愛する陛下の真心は、ご家族へも向けられている。天皇、皇后両陛下ご結婚50年に際しての記者会見で天皇陛下は、こう述べられている。「結婚によって開かれた窓から私は多くのものを吸収し、今日の自分を作っていったことを感じます」

 このお言葉について久能氏は、こう解説する。「民間から迎えられた皇后さまによって一般の社会を知るきっかけとなったことから、深い感謝の気持ちが胸に込み上げて、このようなお言葉になったのだと思います」

 こうして、皇后さまによって“開かれた窓”から国民全員に語りかけてこられた天皇陛下。「2018年7月に発生した集中豪雨被災地のお見舞いに行かれた際には、ありのままの現場を見たいとおっしゃられ、道の先端の崖のようになった場所まで近づかれたので、関係者が心配したほどでした。とはいえ、これが例外というわけではなく、こうした姿勢はいつものことなんです。実際、これまで何度もこうした光景を目にしてきました」(皇室担当記者)

 “皇室の慣例”をいくつも覆し、長きにわたって国民の心に寄り添ってきた天皇陛下。その願いと真心は、今年5月に新天皇に即位する皇太子殿下にも引き継がれることだろう。

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