貴景勝
貴景勝

 昨年11月の九州場所、わずか22歳で初優勝を遂げたのが、当時、小結だった貴景勝である。埼玉栄高在学中の18歳のとき、貴乃花部屋に入門。貴乃花親方の厳しい指導の下、着実に番付を上げてきた。貴乃花部屋は昨年10月に消滅し、所属部屋は千賀ノ浦部屋に変わったが、貴景勝に根づいていたのは、やはり貴乃花の魂だった。初優勝で注目度を上げ、初場所では関脇に昇進。一躍「大関候補」に名乗りを上げた貴景勝。今場所に懸ける熱い思いを聞いた。(取材・文/武田葉月 ノンフィクションライター)

――昨年12月17日には、母校・埼玉栄高に凱旋されましたね!

貴景勝(以下、貴)ハイ! 最寄駅の西大宮駅から高校までオープンカーに乗ってのパレードは、知っている人も手を振ってくれたりして、恥ずかしかったです(笑)。パレードの後は、体育館で中学、高校の生徒が(約3000人)集まって、その前で優勝の報告をさせていただきました。埼玉栄の相撲部で練習をしていた15歳からの3年間があるから、今の自分があると思っているので、特に思い入れが強いんです。

――具体的に、どんなことを教わったんでしょうか?

貴 相撲部を指導してくださっている山田(道紀)先生は、相撲の練習だけでなく、生活も共にしていたので、教わることばかりなんですが、その中でも印象深いのが、「一寸先は闇」という言葉。たとえ良い成績を残しても、翌日ケガして、突き落とされるかもしれない。だから、「調子に乗ってはいけないんだよ」と。まだ自分は、それを実践できていないように思ってるんですけどね(笑)。

――いえいえ、勝っても負けても表情を変えない貴景勝関は、常に平常心を保っているように見えましたが。

貴 もともとは、“勝ったらうれしい!! 負けたら悔しい!!”という性格なんです。高校時代は、勝負は一日で終わるから、勝ったら喜ぶ、でも良かったんですけど、プロになれば本場所は15日間ありますからね。勝っても負けても明日がある。だから、気持ちを一定に保つことが大事だと感じます。今は、勝ったら良かったとは思いますが、“やった!!”とは思わないですね。ただ、ちゃんと平常心が保てるようになったのは、夏場所以降からですね。

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