■石原裕次郎の好きな女性のタイプは?

 そこで重宝されたのが「サカサクラゲ」だった。温泉マークがクラゲを逆さにしたように見えるためだが、連れ込み旅館の隠語となった。本誌が、かの石原裕次郎(29)のインタビュー(1月23日号)で、やたらと増えたサカサクラゲについて聞くと、裕次郎はタバコを持ち直して微笑み、〈必要があるから存在する。まあ、いいじゃないの、あったって〉とキッパリ。また、公衆便所が不足していたことから、〈酔っぱらったときの、こっそり立小便くらいは目をつぶってほしいな(中略)川柳にもあるよ。“よくぞ男に生まれける”なんてのが……〉と提言。

 その裕次郎が嫌いな女性のタイプが、〈やたらにおしゃべりな女〉と〈ストッキンキングのうしろの線がヒン曲がってる女〉。逆に好きなタイプを聞かれると、身を乗り出して〈内緒だけどネ。それはウチのカミさん(元女優の北原三枝)なんだ〉と、おノロケ告白してくれていた。

 この年に紫綬褒章を受賞したのが、落語界の重鎮、古今亭志ん生師匠(70)。『いだてん』ではビートたけしが演じており、ドラマの語り部(進行役)を務めている。

 本誌が11月19日号で、紫綬褒章を受賞することが決まった師匠を直撃すると、〈(紫綬褒章の受賞をお祝いすると)そうだってね。あたしもね、それ聞いて驚いてるんですよ〉と、まるで他人事のよう。〈(落語家なんて昔は)田舎へ行くてェと、ハナシカとカモシカを間違えやがって、鉄砲持って出て来たりしてね。いや本当のはなしなんですよ〉と、いきなり記者を笑わせた。

 そんなこんなで、庶民たちがたくましく生きていた64年ニッポン。最大のイベントは、10月10日に開幕した東京五輪だった。本誌は大会開幕直前に『東京五輪音頭』を大ヒットさせた三波春夫(41)も直撃している(8月13日号)。

 記者が、三波の浪曲とは対極にあるビートルズに熱狂する若い人について意地悪く聞くと、〈わかりません。聞いたことありませんから〉とニベもない答え。ところが、浪曲については〈大衆の心のふるさと、とでもいいますか。だから私は、浪曲は民謡だと思います。私の音頭がうけたのも、やはり大衆の心に伝わるものがあったからじゃないですか〉と熱弁を振るってくれた。本誌も『大衆』の名に恥じないよう、読者の“心のふるさと”になれるよう、精進します!

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