清原和博
清原和博

 ミスターに才能を見抜かれ、指導され、大成した幾多の名選手たち。そこには知られざる感動のドラマがあった。

 プロ野球ファン待望の球春が到来。「巨人は宮崎での1軍合同自主トレをスタート、2月1日には宮崎でキャンプイン(11日まで)。13日からは沖縄に移動して2月いっぱい、みっちり練習を行います。オフに超大型補強を断行しているだけに、球団のV奪還にかける思いは、並々ならぬものがあるでしょう」(スポーツ紙記者)

 “名将”原辰徳監督を再び招いての新シーズン。巨人が注目を集めているが、“ミスタープロ野球”こと、長嶋茂雄巨人軍終身名誉監督の動向も気にかかる。「昨年7月に緊急搬送されて以来、長期の入院生活を余儀なくされたミスターは現在、自宅に理学療法士を招いてリハビリを行っています。今年は新顔が多いだけに、本人は“是が非でもキャンプを視察したい”と言っているようですが、飛行機の移動もあるため、病院側は慎重な姿勢だといいます」(前同)

 球団関係者は親しい記者に、「2月のキャンプは難しそうだけど、開幕には間に合うかも」と話しているというから、期待したい。そんな長嶋氏がキャンプで直接見たいと切望する選手が、広島からFAで巨人入りした丸佳浩だという。実力は折り紙つき。走攻守の三拍子が揃った選手だが、長嶋氏は丸の“経歴”にも注目しているという。「2007年に広島にドラフト3位で指名され、プロ入りした丸は苦労して一軍に這い上がり、チームの顔になるまでに成長したわけです。ミスターはいわゆる苦労人が好きですが、その理由は“苦労してきた分、ちょっとやそっとじゃ、へこたれない”からだとか。丸は今季から広島とは環境が異なる巨人の主軸を担うわけですから、“プレッシャーで成績を落とすのでは”という意見もあります。ただ、ミスターはまったく心配していないようですね」(前出の関係者)

 ロッテからも熱心に口説かれていたという丸。その彼に巨人入りを決断させたのは、「ミスターが左手で書いた直筆の手紙」だったとされる。本稿のテーマである「長嶋茂雄が愛した男たち」――トップバッターは丸ということにしたい。

■張本勲獲得の狙いは王貞治の復活

「長嶋さんは2度、巨人の監督をやっていますが、第1次政権のときに長嶋さんがベタ惚れだったのが、日ハムの“3000本安打”張本勲ですね」(記者OB) 監督就任1年目の1975年、球団史上初の最下位を経験した長嶋氏は、補強に張本を熱望。フロントもあらゆる手を尽くし、獲得に動いた経緯がある。「張本の活躍もあり、翌年は見事ペナント優勝を果たしましたが、張本獲得には“別の狙い”もあったとされています」(前同)

 それが、不動の4番打者・王貞治の復活だ。「75年のシーズンは、打率が3割に届かず、ホームランも33本と、王には不本意な成績でした。王の衰えを気にした長嶋さんは“いい刺激になる”と考え、張本を取ったともいわれています」(同)

 長嶋氏の深謀遠慮は功を奏し、王は見事に復活。76年には打率.325、49本塁打、107打点の成績を収め、本塁打と打点の二冠王に輝いている。「V9時代はよきライバルとして、監督になってからはチームの主軸として、ミスターはずっと王を気にかけてきたわけです」(同)

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