■『いだてん』は高品質な歴史ドラマだった
たとえば、第5話のオリンピック予選会のシーン。四三の後輩である野口(永山絢斗/29)が、走っている途中に競技を抜けてパンを盗み食いしたが、これはなんと史実だ。さらに2位に順位を上げた四三が一瞬、1位のランナーとにらみ合ったシーンもいかにもフィクションめいていたが、これも史実に基づいているという。
こんな「うそのような」仰天事実を上手に盛り込んでいるのが、『いだてん』の特徴なのだ。いつもの大河ドラマと比べて時代が明治以降の話なので、記録資料や情報が多いのかもしれないが、『いだてん』ではこんなトリビアのような話も見事に再現されているのだ。歴史ファンなら、このような細やかなエピソードこそ楽しめるはずだ。
華やかな演出も多く、確かにこれまでの大河ドラマとは明らかに毛色が違う『いだてん』。それでも歴史考証に基づいた、高品質な「時代もの」であることを、今一度、声を大にして述べておきたい。(ドラマライター・半澤則吉)
※画像はNHK『いだてん』番組公式ホームページより