■巨人V9川上哲治監督は日本プロ野球史上ナンバーワン

――巨人の現状をボヤく野村氏には、理想の巨人監督像がある。それは、かつて巨人黄金期を作り上げた川上哲治氏。川上野球に大きな影響を受けた野村氏は、今の巨人に“川上イズム”が残っていないことを嘆く。

野村 今の巨人を見ると、川上さんが築いた野球の継承ができていないことが残念でならない。あれほど最高のモデルがいたというのに、なんでマネしてこなかったんだろう? 本当に不思議なんだよね。川上さんは、日本のプロ野球史上ナンバーワンの監督だと思う。偉大さを挙げればキリがないけど、1961年に監督に就任したとき、メジャーリーグを席巻していたロサンゼルス・ドジャースの戦法をベースに、組織で戦う緻密な野球を取り入れたのは画期的だった。当時は大げさに言えば、「4番が打って、エースが抑えれば勝つ」という、個々の選手の力に頼る野球が主流だったからね。その後、巨人が常勝軍団になったことを考えても、日本のプロ野球界に革命をもたらしたと言っても過言じゃないよ。

 たまに「ONとあれだけの戦力がそろっていたら、何度も優勝するのは当然」なんて言う人がいるけど、そんな甘い世界じゃない。投打がうまく噛み合って、勢いに乗って連覇ぐらいはできたとしても、それだけで9年連続で日本一になんてなれるわけがないんだ。ONに対しても特別扱いをせず、選手みんなに“フォア・ザ・チーム”の精神を植えつけて、常に緻密な野球を徹底する。そんな指導者としての川上さんの手腕を、俺はずっと尊敬している。でも、V9時代の“川上野球”は完全に途切れてしまったね。

――最後に、今シーズンの巨人の順位を野村氏に予想してもらった。

野村 あの戦力じゃ、優勝して当たり前(笑)。資金力に物を言わせて、有能な選手を集めているんだから、やっぱり優勝しなければイカンでしょ。順位は1位しかないよ。とはいえ、去年も、まったく同じ予想をして外れたんだけどね(笑)。

のむらかつや……1935年、京都府生まれ。54年、テスト生として南海ホークスに入団。戦後初の三冠王をはじめ、数々の記録を打ち立てる。80年に現役引退すると、3球団で監督を歴任。「ID野球」で各チームを立て直した。まさに球界が誇る“智将”。

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