麻美ゆまと乙武洋匡(右)
麻美ゆまと乙武洋匡(右)

 乙武洋匡さんが世に出られたのは大ベストセラーとなった『五体不満足』。

ゆま「もともと、『五体不満足』が生まれたキッカケは何だったのですか?」

乙武「私が大学2年だったとき、NHKの『青春探検』というドキュメンタリー番組で取り上げてもらったんです。それが放送された際、『五体不満足』の担当編集者である小沢一郎さんの奥様が興味を持たれて、ビデオに録画されていたんです。後に小沢さんがビデオを見て“本を出しませんか”と声をかけてくれたんです」

ゆま「じゃあ、編集者の方の奥さんがビデオに録画していなかったら、あの本は生まれなかったんですね」

乙武「はい。本当に、いろいろな偶然が重なったんです」

ゆま「それが累計600万部も売れる大ベストセラーになった。生活が一変したんじゃないですか」

乙武「そうですね。街でサインをお願いされたり、自宅の前に週刊誌の記者が張り込みされていたり(笑)。私が選挙に出るのではないかと騒がれていたので。ただ当時はまだ22歳。被選挙権がないので、出馬できるわけがないんですけどね」

ゆま「アハハ。『五体不満足』が出版されたのは、もう20年以上前なんですね。そして、昨年の秋には再び、小沢さんとタッグを組まれて、乙武さんは小説『車輪の上』(講談社)を出版されました」

乙武「小沢さんも定年退職されることになったので、もう一緒に仕事をすることができないかもしれない。花道を飾ることができたらと書いたんですが……これが恐ろしいほど売れていないんです(笑)。『週刊新潮』さんにも、“『五体不満足』の0.1%しか売れていな い”とイジられる始末で(笑)」

ゆま「著者の方が堂々と“売れていない宣言”されてもいいんですか(笑)。そもそも『五体不満足』が売れ過ぎた、というのもありますよ。ちなみに『車輪の上』はホストクラブが舞台の小説ですけど、なぜホストの世界を書こうと思われたんですか?」

乙武「親友がホストクラブのオーナーをしていることもあって、ホストの人とは以前から交流があったんですね。そんな中で、彼らの“多様な境遇”に触れる機会もあったんです。お父さんが4人いるとか、それこそ、映画『万引き家族』のような境遇の中で生活してきた人もいるんですね。私は、たまたま身体障害者という境遇で生まれてきましたが、自分に限らず、しんどい境遇で生きてきた方もたくさんいるんですよね」

ゆま「分からないだけで、いろんな過去を背負っている方がいるんですよね。それはホストに限らず……」

乙武「そうなんです。でも、ホストという職業だけで、良い印象も持たれませんよね」

ゆま「確かに……」

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