<改札で、「こっちは客だぞ」と大声が聞こえた朝>

 誰もが不機嫌な朝、通勤電車に乗る改札で、「こっちは客だぞ」と駅員さんに大声を出している人がいました。

 なにがあったのかはわかりませんでしたが、きっと改札でひっかかってしまったのでしょう。改札の外で待っている友人らしき人たちも、止めるでもなく「あーあ、やってるよ」という顔で眺めているだけでした。

「こっちは客だぞ」

 この言葉はいろいろな場面でふいに遭遇します。

 コンビニのレジで、ファミレスの注文で、医者の受付で、変化球では郵便局の受付番号をもらう機械に向かって。こっちは客ですが、だからなんだって言うのでしょう。
たまごが欲しいので販売しているスーパーでレジを打ってもらい袋に入れてもらう。その代わりにたまごの値段108円を渡す。

 だってわたしはたまごを作ることができないから。

 ファミレスで山盛りポテトフライを頼み、店員さんに「クーポンはありますか?」と聞かれ、あわててアプリのクーポンを見せる。ごちそうさまーと思いながらレジを売ってもらい、お店を出る。

 だってわたしは山盛りポテトフライを食べたいと思った瞬間に瞬時に作ることはできないから。

 ときどき、マックのポテトが強烈に食べたくなるときがあります。心の中で暴発した「今すぐ! 今すぐに早くマックのポテトを食べないと無理! 早く!」という気持ちを抱えながらレジに向かうときのわたしの気持ち。

 どうか、ポテトを売ってください、今すぐに、お金は渡しますから……。

 お金を払うから偉いのではなくて、ただの等価交換です。

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