<自分の日常を愛せないから、アイドル現場だけはプラスの感情だけにしたい>
そして、握手会。
新しいグッズを買ったら予想外に握手券をたくさんもらってしまい、緊張しながらループをし、2回目の握手では話すことを考える前に順番が来てしまいました。
「話すことを考えるまえに並んじゃいました…」
とどもりながら伝えると、
「そんなの気にしなくていいんですよ。ライブを楽しんでくれて嬉しいです」
と笑顔でわたしの両手をぎゅっとにぎってくれました。
さらに、
「アイコさんは、お昼はなにを食べたんですか?」
と話しかけてくれました。
うまく話せないわたしは、これからもアイドルに会いに行き続けますが、テンプレのように「好きです」「楽しかったです」「いつもかわいいです」しか言えないと思います。
歌とダンスで励ましてくれるアイドルの裏側には、ボイトレにダンスレッスンに歌詞割りや立ち位置の暗記など、わたしたちの前に立っている何十倍もの時間がある。決して見せようとしないその裏側の時間の重みのぶん、わたしたちファンはアイドル自身を肯定し続けていたい。できるお返しはそのくらいです。
そんなことを書きながら、炎上系と呼ばれることもある好きなアイドルの子のSNSを見たら、呼び捨てで説教する系アンチ(本人はファンのつもりかもしれませんが)を「うるせえ!」と爽快に蹴散らしていて、わざわざアイドル本人がそんなことを言わなくても済むようになるべき、と思いながらも。あまりの爽快さについ笑ってしまいました。
アイドルとファン。
そこはプラスの言葉と感情だけを交換しあっていたい。
だって、日常はとてもプラスのことだけではないのだから。だからこうして好きな場所だけでも、せめてお互いが幸せになることだけにしていたいのです。
愛せない日常と夜中のイヤホンで流れるアイドル
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