「ボートレースアンバサダー」植木通彦氏
「ボートレースアンバサダー」植木通彦氏

 ボートレースならではのスタートのスタイル「進入」。初心者には少し分かりづらいかもしれないが、そこには意外なドラマもあるという。現在「ボートレースアンバサダー」として活躍し、現役時代には数多くの名勝負をくり広げた“艇王”植木通彦氏に、進入隊形の面白さをレクチャーしてもらった!

――ボートレースは通常、待機行動で内から123456と艇番順に「枠なり進入」という隊形が多い。123が助走距離の短い「スロースタート」、456がボートを後ろに引っ張って助走を十分に取る「ダッシュスタート」で発進するのだが、進入隊形が変わってしまうのはどんなときなのだろうか?

■ピット離れが重要

植木通彦氏(以下、植木)「モーターの性能などにもよりますが、ピット離れが速ければ、内側のコースを取りにいきます。そうなると、すんなりとは艇番通りの並びになりません。そのかけ引きが面白い。それぞれがいろいろな考えを巡らせながらスタートに臨むわけです」

――どうやら、スタートするまでの短い間、すでに激しいドラマが展開されているようだ。

●G1レースの優勝戦でも驚愕の出来事が!

 進入といえば、G1レースでも驚く出来事があった。それは、1月の蒲郡G1オールジャパン竹島特別。なんと優勝戦で、1号艇の桐生順平選手に対し、2号艇の井口佳典選手がインコースを奪ってしまったのだ! 6号艇も5コースに入ってきて、進入隊形は内から213465。これにはビックリした。

植木「そう珍しいことではありませんよ。私も、何度もインコースに入られた経験がありますから」

――ボートレース界のレジェンドから思いがけないお言葉。

植木「もちろん、動揺はありますけど、あらゆることを想定しながら1着を獲るにはどうしたらいいかを考えます」

――なるほど。そこには、ボートレーサーだからこその思いがあるようだ。

植木「出足というのは、握り込みが大事。握った瞬間、スムーズにいっている人と重い人が、本場に行くと分かったりします。そういうのを見るのも面白いですよ」

――植木氏に教えていただいたことを念頭に置いて、ボートレース場で間近に見れば、さらなる楽しみが増えそうだ。

■進入に注目しつつ5万舟券!

 個人的にも、進入についてはこんな思い出がある。昨年のプレミアムG1ヤングダービー開催3日目第8レース、5号艇の安河内将選手が素早いピット離れから3コースに入り込んだのである。

 すると、安河内選手のマクリ差し一閃! 516=554.6倍をいただいた。思わず、ガッツポーズを握り締め、雄叫びを上げたのを覚えている。

 これからも、進入隊形には要注目。植木氏のお話を思い出しながら、ボートレースの面白さ、奥深さを堪能したい!

うえき・みちひこ 1968年生まれ、福岡県出身。ボートレースの世界で、“艇王”と謳われたレジェンド。公営競技史上初の年間獲得賞金2億円を手にし、生涯獲得賞金22億円を突破するなど活躍。引退後は“ボートレーサー養成所(旧やまと学校)”所長として後進の育成にあたった後、要職を経てボートレースアンバサダーに就任。

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