世間では3月ですが、競馬界では2月が年度末。今年も東西で8人のベテラン調教師が定年を迎え、勇退されました。美浦の伊藤正徳先生、栗田博憲先生、柴田政人先生、谷原義明先生。栗東の沖芳夫先生、坂口正則先生、中村均先生、松元茂樹先生。どのお顔も、お世話になった方ばかりです。先生たちとの思い出を話しだすと、本が一冊書けそうなほどあります。その中から、思い出すまま、いくつか書いてみたいと思います。

 まずは松元先生です。先生とは、2002年のG1スプリンターズステークスを勝ったビリーヴ、そのビリーヴの仔で、一緒にドバイに遠征したファリダットなど、次々に馬の名前が浮かんできます。坂口先生といえばエイシンヒカリです。15年の香港カップで初のG1を奪取。翌16年にはフランスに遠征し、G1イスバーン賞に挑戦。後続を8馬身も突き放す強い競馬で、“日本馬、ここに在り!”という大きな仕事を成し遂げたことは、僕の中でも大きな出来事でした。

 柴田政人先生との思い出は、調教師になる前、同じ騎手として、その大きな背中を追いかけた記憶が色鮮やかによみがえります。岡部幸雄さん、祐一の親父さんである福永洋一さん、今回、一緒に勇退された伊藤正徳先生と同期で、騎手としての成績は、1万1728戦1767勝。G1が15勝。重賞勝利89勝。何があってもブレない、凛としたその背中は、デビュー当時の僕にとっては、巌のように大きいものでした。イギリス、フランス、アメリカ……海外遠征にも積極的で、美浦の若手に対して、「海外に行け」と話をされていました。

 一番の思い出は、93年の牡馬クラシック……柴田さんのウイニングチケット、岡部さんが騎乗したビワハヤヒデ、僕が乗ったナリタタイシンの3強対決です。この年、皐月賞が僕、菊花賞が岡部さん、そして、ダービーを制したのが柴田さんでした。ダービーに憧れ、ダービージョッキーになることを夢に見て、その座を手にした柴田さんの顔は、興奮で紅く染まっていました。

――世界中のホースマンに、第60回ダービーを勝った柴田政人ですと伝えたい。レース後の勝利ジョッキーインタビューで答えた柴田さんは、ものすごくかっこよかったです。

 それぞれに流儀があり、こだわりを持って馬を育ててきた先生たち。本当にお世話になりました。そして長い間、お疲れ様でした。

■今週はG2金鯱賞!

 今週末は、土曜が阪神、日曜は中京に参戦。10日の中京では、10R3歳オープンの昇竜ステークスで木梨憲武さんが名づけ親のタイミングナウ。メインのG2金鯱賞は、目下5連勝中のエアウィンザーと挑みます。

 勇退される先生たちに代わり、競馬の明日は僕ら後輩が引き継いでいきます。

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