麻美ゆまと山田ルイ53世(右)
麻美ゆまと山田ルイ53世(右)

 今回、私が会いに行ったのは「ルネッサ~ンス!」でおなじみのお笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世さんです。お会いするのは、これが初めて。でも、私は昨年、山田さんが出版された『一発屋芸人列伝』(新潮社)を読ませていただいて、ものすごく感動したんですね。実際は、どんなお方なのかしら。緊張しつつ、対談させてもらいました。

ゆま「初めまして!お会いしたかったんです」

山田「ありがとうございます。まあ、お会いできなかったのは、僕が売れていないからだと思います」

ゆま「いやいやいや(笑)」

山田「それにしても(本誌を手に取りながら)、最近の週刊大衆さんは表紙がドギツイねえ~」

ゆま「すみません(笑)」

山田「いや、いいんですよ。中身は素晴らしいと思います。特に、このゆまさんの連載。志村けんさんも出演されていて、スゴイと思います。連載は何年ぐらい続けているんですか?」

ゆま「えっと、かれこれ10年ぐらいになります」

山田「おお、すごい! 10年も続く連載なんて、なかなかないよね」

ゆま「ありがとうございます。山田さんは芸歴は何年になるんですか?」

山田「1999年デビューだから、もう20年ぐらいになるね~。ただ、僕の20年なんて本当に大したこともできず、スカスカですよ。芸人として、順調にキャリアを積んできたわけではないからね」

ゆま「そこまで謙遜にされなくても……」

山田「まあ、苦渋と不本意なことでパンパンではありますけどね(笑)」

ゆま「アハハ。こういう自虐的なお話をされるのが、山田さんって感じで、なんだかホッとします。芸人になろうと思われたキッカケは何だったんですか」

山田「キッカケかぁ。そもそも、僕は中学2年から6年間“引きこもり”だったんです」

ゆま「6年間も? ということは……」

山田「20歳のときに、ようやく大検を受けて大学に入学したんです。ところが結局、大学も途中でやめてしまって……学歴もないから就職できない。他にやることもないから、東京に出て、吉本の養成所である“東京NSC”に入ったんです」

ゆま「へえ~。“俺には、お笑いしかなかった!”ということですか?」

山田「いやいや、そんな格好エエ話じゃありません(笑)。ほんまに大した情熱もなく、なんとなく、お笑いの世界に足を踏み入れたから、“お笑いで天下を取ってやる!”みたいな情熱なんか、まったくなかったんです」

ゆま「それでも20年間続けていらして、貴族ネタで大ブレイクされたんですから、スゴイですよ」

山田「全然すごくないです。自分は今も劣等感とコンプレックスの塊ですから」

ゆま「それは、引きこもりが原因ですか?」

山田「そうですね。やっぱり引きこもりはよくない。人生が投げやりになるんです。何をやってもムダと思っているから、何事にも没頭できないんです。たまに、こういうインタビューで“引きこもりの6年間があったからこそ、今があるんですよね?”といった質問をされるんですけどね。とんでもない。引きこもりは、ただただ無駄な時間です」

ゆま「キッパリと言っちゃうところが格好いいです」

山田「なんかね~。最近って、なんでもかんでも人生に意味を求めて“美談”にしたがる人が多いでしょ」

ゆま「確かに(笑)。私もそういうところ、あります」

山田「もちろん、人生に意味を求めてもいいし、過去に引きこもりだった人が、その経験を生かして、成功することだってあると思うんです。でも、その一方で僕みたいに“無駄だった”と思う人がいるのも事実。それはそれで構わないと思うんですよね。何も無理やり、自分のしてきたことに“意味”を持たせる必要もない」

ゆま「そう考えると、なんだか少し気持ちが楽になりますよね。実際、今の私たちは何事にも意味を求めすぎて、窮屈になっている気がします」

山田「おっしゃる通り。今の世の中、常に輝いていなければいけないという考えがすごく強い。“勝ち組でいなければいけない”というプレッシャーがあるから、しんどくなるんです」

ゆま「あ~、なんだか胸にしみる言葉です」

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