■ID野球で巨人を挑発

 野村氏の代名詞であるID野球はデータを重視する野球理論だが、彼がこれに開眼したのは、長嶋氏の存在があったからとされる。〈長嶋茂雄やイチローのような天才なら、そういうときでも身体が咄嗟に反応する。しかし、不器用なわたしにそんな真似はできなかった。(中略)となれば、残された方法はただひとつ。「頭を使う」しかない〉

 自分は長嶋氏のような天才肌の打者ではない。だから、相手の癖を分析し、ヤマを張って打ち、本塁打を量産したわけだ。捕手としての心理戦も有名だ。「“ささやき作戦”です。打席に立った相手に、“銀座のオネーチャンとお盛んだそうやな”などと囁き、相手の動揺を誘うんです。ただ、ハリさんにこれを試したら、空振りした際にバットでヘルメットを殴られたのでやめたとか(笑)。ミスターの場合は、“そうなんですか〜。いいことを聞いたな〜”と返してくるんですけど、次の瞬間、カーンと快音を響かせる。まったく効果がなかった(笑)」(ベテラン記者)

 V9戦士の黒江透修氏も、こう述懐する。「囁きは嫌がる人が多かったけど、私は“この球、甘くなるな”とか、ノムさんがつぶやいたら、“次はカーブだな”と、ヒントにしていましたね(笑)」

 打者に揺さぶりをかけることはもちろん、投手の癖を詳細に分析することなど朝飯前。こうしたID野球の集大成が、90〜98年のヤクルト監督時代だった。「9年間でペナント優勝4回、日本一3回。文字通り、ヤクルトの黄金時代を築きました。93年にミスターが巨人の監督に復帰すると、“カンピュータでは勝てない。巨人は金で優勝を買うんか”と、挑発を繰り返したのも印象的です。ミスターは、ノムさんの皮肉を意に介していないように見えましたが、近しい人には“ノムさんに負けるのは悔しい”と、こぼしていたといいます」(前出の球界OB)

 執拗に長嶋監督を挑発し続けた野村氏の真意は、〈長嶋はヒーローである。ならば私がヒール、すなわち悪役を演じれば、メディアがおもしろがって取り上げてくれるだろう〉だった。長嶋氏に憧れ、嫉妬し、反骨心を抱き続けた野村氏。しかし、その根底には尊敬の念があふれていた。「これはハリさんも同じ。ハリさんは『ON論』という本を書いているくらい、ミスターや王さんの信奉者。ハリさんはミスターの前では直立不動ですしね。ノムさんにしても、ミスターのことを認めているからこそ、あれだけ皮肉を言ったんですよ」(前同)

 野村氏は、こう記した。〈「これぞプロフェッショナルだ」と私が認めるのは長嶋茂雄である〉

 3月29日、2019年シーズンが開幕する。

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